ロンドン日本人村を作った男――謎の興行師タナカー・ブヒクロサン 1839-94

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  • 小山 騰
  • 四六上製 368ページ
    ISBN-13: 9784865780383
    刊行日: 2015/08

日本最初のパスポートで海外に渡航したのは、軽業見世物一座だった!

1859年、幕末の混乱渦中に日本に来航し、英・仏の駐日領事館通訳として雇われるも、欧米で注目を集める「軽業見世物」の興行師に転身し、日本人一座を率いて世界各地で公演、ついに1885年ロンドン「日本人村」を仕掛けた謎のオランダ人の正体とは?
もう一つの“ジャポニスム”=軽業見世物興行を通じて、19世紀後半の日英関係史に迫る。
●カラー口絵16頁


目次


 序 章 幕末・明治期の軽業見世物興行とジャポニスム

第Ⅰ部 駐日英・仏公使館員時代(1859-66年)
 第一章 日本への来航と横浜在住時代
 第二章 横浜鎖港談判使節団とともに渡仏
 第三章 逋債事件と興行師への転身

第Ⅱ部 軽業見世物興行師時代(1867-81年)
 第一章 ブレックマンとドラゴン一座
 第二章 タナカー・ブヒクロサンの誕生
 第三章 英国の軽業見世物事情とブヒクロサン
 第四章 「ジャパン・エンターテインメント」へ
 第五章 ゴダユー一座こぼれ話――オーストラリアへの移住

第Ⅲ部 「ロンドン日本人村」仕掛け人時代(1883-94年)
 第一章 日本の美術品および日本製品の流行
 第二章 ロンドン日本人村の開業――1885年
 第三章 先行した二つの万国博覧会の影響
 第四章 ロンドン日本人村の経営と“住民”雇用事情
 第五章 ロンドン日本人村の焼失と再建
 第六章 ロンドン日本人村の残した影響
 第七章 軽業興行の変遷とブヒクロサンの最期

 終 章 日英博覧会余聞――1910年


関連情報

開国により日本人の海外への出国が許可されるようになると、めざとい外国人は早速日本人による軽業見世物の海外公演に目を付けた。日本人の軽業、曲芸、手品などの一座を海外に連れ出し、その興行で一儲けをしようとたくらんだのである。本書は海外で“日本”を“見世物”にしたタナカー・ブヒクロサンの物語である。その異色の“外国人”の物語に焦点を当てることにより、一体日本の近代とは何であったのかという疑問を考える手がかりにしたい。“日本”見世物興行仕掛け人ブヒクロサンに、幕末・明治時代(開国・明治維新期)の一面を裏から照射してもらう試みである。この人物が活躍することができた歴史的舞台は一体何であったのであろうか。そのあたりを検討すると、日本の近代に対する新しい見方が出てくるかもしれない。
(序章より)


■タナカー・ブヒクロサンとは?
 1839年オランダ・アムステルダムに生まれる。本名フレデリック・ブレックマン。世界を放浪の後、1859年長崎に来航。英国公使館・フランス公使館で通訳に雇われる。下関事件の交渉(1861年)や横浜鎖港談判使節団(1864年)にも通訳として陪席するが、フランスからの軍艦購入代金を幕府から搾取して通訳をクビになる。自分で商社を起こすも、支払いを踏み倒して投獄される。サンフランシスコに逃亡したが、折しも同地で公演され、注目を集め始めていた日本の軽業見世物に着目、1867年、自らの一座を立ち上げてサンフランシスコで公演、さらに米国内や英国、オーストラリアなど、各地で公演を行なう。この頃からタナカー・ブヒクロサンという日本人的な名前を自称し始める。
 1873年頃から「ジャパン・エンターテイメント」を提唱、単なる軽業・演芸の興行のみならず、日本の家屋や屋台村を設営し日本の物産の販売や工芸の実演を行なう総合的興行へと発展させていく。
 1885年、その集大成としてロンドンに「日本人村」を開業、4か月で25万人の来場者を集め大盛況となるも、わずか4か月後に焼失。再開後は人気が低迷し、「日本人村」を売却、以後は英国各地を巡業し、1894年にロンドン近郊で没した。


●小山騰(こやま・のぼる)
1948年愛知県生まれ。現在、ケンブリッジ大学図書館日本部長。成城大学文芸学部卒。慶応大学大学院史学専攻修士課程修了。国立国会図書館、英国図書館などの勤務をへて、1985年よりケンブリッジ大学図書館で日本語コレクションを担当し、現在に至る。英国図書館情報専門家協会公認会員(MCILIP)。著書として『国際結婚第一号』『破天荒「明治留学生」列伝』(いずれも講談社)『ケンブリッジ大学秘蔵明治古写真』(平凡社)『日本の刺青と英国王室――明治期から第一次世界大戦まで』(藤原書店)、共著書として『達人たちの大英博物館』(講談社)『神田神保町とヘイ・オン・ワイ』(東信堂)などがある。

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