資本主義の暴力――現代世界の破局を読む

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  • 斉藤日出治 著
  • 四六上製 304頁
    ISBN-13: 9784865783124
    刊行日: 2021/4

経済学説の盲点に潜む資本主義のパラドクスを暴き出す!
世界は生き延びることができるのか?

数多の社会思想を博捜し、資本主義の破局を洞察したフーコー、フロイト、ポランニーら数少ない思想家の学説を検証。そこから現在の世界が直面する根源的危機を問う警世の書。


目次

 はしがき――死にゆく社会、終りゆく世界

 序 章 原子力の産業的利用と「市場経済全体主義」
  はじめに――原子力の産業的利用と市場経済の原理
  一 「戦後経験」と「市場経済全体主義」――藤田省三
  二 「経済的自由主義」と全体主義――カール・ポランニー
  むすび

第Ⅰ部 新自由主義の経済学説批判――市民社会の政治の発見
 第1章 自由の神話作用と資本主義の破局性
  はじめに――新自由主義の根源へ
  一 「格差の社会的表象」と自由の神話――トマ・ピケティ
  二 「市場のユートピア」の神話作用――カール・ポランニー
  三 自由主義的統治と自由の神話――ミシェル・フーコー
  四 「経済人間」と自由の神話――クリスチャン・ラヴァル
  むすび
 第2章 グローバル資本主義の統治と「新しいコーポラティズム」
  はじめに――グローバルな秩序を構成する権力
  一 自由主義的統治実践とグローバリゼーション
  二 自由主義の統治術と国家
  三 新自由主義国家の誕生
  四 「新しいコーポラティズム」
  むすび――「新しいコーポラティズム」がはらむ破局性
 第3章 制度経済学の言説――市民社会の政治と全体主義
  はじめに――「経済理論の制度主義的転回はあるのか」
  一 市民社会における新しい政治概念の発見
  二 市民社会の統治性――ミシェル・フーコー
  三 制度経済学と市民社会の統治性――レギュラシオン理論
  四 制度経済学と市民社会の統治性――オルド経済学
  むすび 「社会は防衛しなければならない」――ポランニーとフーコー

第Ⅱ部 戦後日本資本主義の破局的危機―― 「歴史戦」 と 「大東亜戦争」
  はじめに 歴史的対話――新自由主義の危機と一九三〇年代危機
  一 方法としての市民社会
  二 米国における市民社会の共進化と新自由主義の発生
  三 日本の新自由主義と市民社会の共進化の構造転換
  四 市民社会の共進化と「大東亜戦争」
    ――松浦正孝『「大東亜戦争」はなぜ起きたのか』で読む――
  むすび

第Ⅲ部 資本主義と死の欲動――精神分析で読む資本主義の破局
 第1章 グローバル資本主義の精神分析
  はじめに――資本主義は死を望んでいる
  一 フロイトの〈死の欲動〉――人類の自己攻撃的欲動
  二 資本主義と〈死の欲動〉
  三 肛門性愛と〈死の欲動〉――糞便と貨幣
  四 ジョナサン・スウィフトによる〈死の欲動〉の発見
  五 ケインズの貨幣認識――貨幣欲望批判
 第2章 商品の物神性と〈死の欲動〉――フロイトで読むマルクス
  一 商品世界と〈死の欲動〉――価値抽象の暴力
  二 近代市民社会における群集心理と〈死の欲動〉
  むすび――世界の破局的危機か、グローバルな連帯か?
 〈付 論〉関東大震災における朝鮮人・中国人虐殺はなぜ起きたのか

 あとがき――現代世界の破局をどう生きるか
 参考文献
 人名索引

「あとがき」より

この世界は、いま経済という名の戦争状態に突入している。民衆はこの戦争に対して、みずからを防衛する戦争を組織し、みずからを国家に抗する「戦争機械」(ドゥルーズ/ガタリ)として鍛え上げることを求められる。
ひとびとをシステミック・リスクにさらし、社会を破局に追いやる力と、協同と連帯によってそのリスクに立ち向かう力とがせめぎ合う戦争が、階級闘争の主戦場としてそのすがたをあらわす。
わたしたちは、社会のいたるところで、多様で広範にシステミック・オルタナティヴの運動を創出して、戦場に生きる闘士であることを自覚しなければならない。とりわけ、パンデミックが生み出した破局的な社会状況は、ひとびとにその自覚を喫緊の課題として迫っている。

【著者紹介】
●斉藤日出治(さいとう・ひではる)
1945年、長野県生。名古屋大学大学院経済学研究科博士課程満期退学。専攻・社会経済学・現代思想。博士(経済学)。大阪産業大学経済学部教授を経て、大阪労働学校・アソシエ学長。
著書に、『物象化世界のオルタナティヴ――現代資本主義と言語・情報・記号』(1990年、昭和堂)、『ノマドの時代――世紀末のヨーロッパと日本』(1994年、1999年に増補新版、その際サブタイトルを「国境なき民主主義」に変更)『帝国を超えて――グローバル市民社会論序説』(2005年、以上大村書店)『国家を越える市民社会――動員の世紀からノマドの世紀へ』(1998年)『空間批判と対抗社会――グローバル時代の歴史認識』(2003年、以上現代企画室)、『グローバル化を超える市民社会――社会的個人とヘゲモニー』(2010年、新泉社・21世紀叢書)、『グローバル資本主義の破局にどう立ち向かうか――市場から連帯へ』(2018年、河合ブックレット)、『都市の美学――アーバニズム(これからの世界史13)』(岩永真治と共著、1996年、平凡社)がある。他にも編著、共著あり。
訳書に、M・ギヨーム『資本とその分身――社会的コードの経済学批判』(1987年)、『狼狽する資本主義』(1993年、以上法政大学出版局)、M・アグリエッタ『通貨統合の賭け――欧州通貨同盟へのレギュラシオン・アプローチ』(1993年)、B・シャヴァンス『システムの解体――東の経済改革史1950-90年代』(1993年共訳、以上2冊はいずれもレギュラシオン・ライブラリー)、G・ドスタレール/B・マリス『資本主義と死の欲動――フロイトとケインズ』(2017年、以上藤原書店)、B・シャヴァンス『社会主義のレギュラシオン理論――ソ連経済システムの危機分析』(1995年、大村書店)、H・ルフェーヴル『空間の生産』(2000年、青木書店)。その他多数の共訳書あり。

*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです

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