黒衣の女 ベルト・モリゾ――1841-95

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  • ドミニク・ボナ
  • 持田明子訳
  • A5上製 408ページ
    ISBN-13: 9784894345331
    刊行日: 2006/9

印象派女性画家の画期的評伝

■マネ、ルノワール、モネ、セザンヌ、ドガ……印象派などの近代画家たちの中でも、女性画家として光彩を放つベルト・モリゾ。
■母と子、洗濯など家庭のささやかな一瞬の情景を捉え、のびのびした明るい筆づかいで描きこむ彼女は、黒づくめの衣裳の奥から神秘的な視線を投げかける、かのマネの絵の有名なモデルでもあった。
■未発表資料を駆使し、その視線の奥に潜む絵画への情熱をいきいきと描きだす。カラー口絵8頁.



目次

スミレの花束の謎

エドゥアール・マネの絵画の中で、最も多く14点もの作品のモデルをつとめる女性、
自らも職業画家だったベルト・モリゾをめぐって、どんな物語があったのだろうか?

ベルトの秘密のアトリエ

マネのバティニョル街のアトリエのまわりに集うドガ、 バジール、 ルノワール、 シス
レーら多くの画家たち。 ひきかえ、 ベルトは郊外の自然を画布に写しとる。

一風変わったブルジョワジー

画家ベルト・モリゾへと至る系譜とは?  画家フラゴナールともつながる家系の、
シェール県知事の父、 エドム・ティビュルス・モリゾは、 ベルトにデッサンを進める。

スタートラインに立つ三姉妹

ベルトには2人の姉、 イヴとエドマがいた。 最も心を許せるのは次姉エドマ。 姉たち
とともに絵を学び始め、 ショカルヌ、 続いてギシャールについてデッサンを勉強する。

ルーヴル美術館――殿堂とラブホテルの間で

官立美術学校に女性は入学できない。 ルーヴル美術館でラファエロやヴェロネーゼの
傑作を模写するベルト。 画家たちの中心的存在ファンタン=ラトゥールにも出会う。

反画一主義の流派

自然を好んで描く画家モネやピサロは、 ベルトの同時代人である。 ベルトは姉エドマ
とともに、 風景画家コローのもとで自然をカンバスに描きはじめる。

ベルト、 頭角を現す

1864年の官展に、エドマとともに入選したベルト。 複雑な内面をあくまでも自己の内
部にとどめ制御する傾向のあるベルトは、 自分の将来に不安を抱きはじめる。

パシーに吹く理知的なそよ風

毎週火曜日、 モリゾ家に集う芸術家たち――作曲家ロッシーニ、 画家カロリュス=デ
ュラン、 ステヴァーンス夫妻、 リズネール家の人々らとの交際。

スキャンダルの中の思慮深い娘

フランクリン街のモリゾ家にはアトリエが建てられ、 ベルトは毎年官展に出品を続け
る。 そしてスキャンダルを巻き起こした 《オランピア》 の作者マネと出会う。

黒いパレットを手にするダンディー

「モリゾ姉妹は魅力的です。 彼女たちが男でないのは残念です」(マネ)。 マネが最
も好む色 「黒」 をまとった姿で、 ベルトはマネの絵のモデルとなる。

陰の側面、 光の側面

マネの周りには常に女性の影がある  ――妻シュザンヌ、そしてヴィクトリーヌ・ムー
ランら多くのモデルたち。 マネの絵を同時代人の中で最も賞賛するベルト。

たった一人で芸術の苦悩と向き合って

姉たちは2人とも結婚し、 特に最も近かったエドマとの別離に途方にくれるベルト。
しかし自身は結婚を選ぼうとはせず、 芸術家たちと交流を深めてゆく。

二重のライバル

マネとベルトの間に、 同じようにマネの絵のモデルともなり、 自ら画家でもあるエ
ヴァ・ゴンザレスが現れる。 ベルトは激しい苛立ちを感じる。

不屈の女性の難行苦行

情熱的だが、 完璧を求め、 妥協することができず、 内面を頑として開かず守りぬき、
肉体と食事を嫌悪するベルトは、 結婚を選ぶことはできない。

鉛筆と銃

マネの絵にも、 戸外を愛するベルトの影響が見られる 《庭で》 という作品がある。 時
代は、 普仏戦争から共和制、 パリ・コミューンと激しい渦に巻きこまれてゆく。

政治的情熱の解毒剤、 水彩画

母が結婚を望むものの、 ベルトは絵を描き続ける。 シュルブールのエドマの許にい
て、 水彩に熱中し、 しだいに油彩にもその明るく軽やかで自由な感覚を持ちこむ。

風変わりに拒絶された求婚者

フレスコ画の技法を使う、 象徴派の作風の画家ピュヴィ・ド・シャヴァンヌに言い寄
られ、 魅かれたように見えながらも、 2人の関係は実を結ぶことがない。

控え目な男性

赤ん坊に穏やかな視線を注ぐエドマを描く 《ゆりかご》 他の作品には、 ベルトの精神
の落ち着きが感じられる。 そしてベルトはマネの弟ウジェーヌ・マネとの結婚を決意。

絵を描く  ――職業になった情熱

絵画の世界に新しい風が起こる。 1873年、 官展を離れる無名の画家たちの集まりに、
ベルトも参加。 「印象派」 の画家たちの誕生である。

異郷への欲求

姉イヴとのスペイン旅行、 夫とのイギリス旅行、 そしてイタリア、 ベルギー、 オラン
ダを訪れる。 ベルトは旅先でも絵筆を離さず、 美術館を訪れ傑作を見てまわる。

アンデパンダン派の中の女性画家

印象派の画家たちは展覧会を重ね、 ベルトもほぼ全ての印象派展に出品を続ける。し
かしマネは決してグループには入らず、 個人での活動を守り続ける。

モリゾ嬢、 マネ夫人となる

夫ウジェーヌは画家としてのベルトを支える存在である。 ベルトを励まし、 絵の売買
や展覧会への出品などを助ける。 しかし、 姑のマネ夫人との関係は、 うまくいかない。

天才たちの輪

友人の画家たちの中には、 ベルトに最大級の敬意を抱いているルノワール、 ベルトが
その天分を認めるモネ、 気難しく謎めいたドガの3人がいる。

詩人は楽しむ  ――詩人とミューズ

マネの 《扇を持つ婦人》 のモデル、 ニナ・ド・カリアスを介して、 マネを尊敬する詩
人マラルメが画家たちの輪の入ってくる。 彼はベルトとも親しくなる。

母であること  ――芸術以外の目的

ベルトに待ち望んだ子供、 娘ジュリーが生まれる。 乳母にお乳をもらうジュリーか
ら、 砂遊びをし、 庭に佇むジュリー、 たくさんのカンバスにその姿が描かれる。

幸福の家々

ウジェーヌ・マネとベルトが建てたパリのヴィルジュスト街の家には、 多くの画家た
ちが集まる。 夏を過ごすニース、 郊外メズィーで、 ベルトは創作を続ける。

友が姿をけす

死に至る病に冒されながら創作を続けるが、 1883年、 エドゥアール・マネは亡く
なった。 ベルトはマネの追悼展の準備に力を尽くす。

絶望の誘惑

病に冒され衰弱してゆく夫ウジェーヌに付き添いつづけるベルト。 そして若さを失っ
た白髪の 《自画像》 を数点、 描く。

生きる決心をして

夫が亡くなり、 ベルトは絶望に打ちひしがれるが、 自分に残された時間を絵にささげ
る決心をする。 ウジェーヌが生前準備していた彼女の個展が、 1892年に開かれる。

横溢する青春

ベルトは、 絵を描く姪のポール・ゴビヤール、 その妹でジュリーの遊び友だちのジャ
ニー、 たくさんの少女のモデルなど、 若い娘たちに囲まれ、 絵筆をとりつづける。

総決算のとき

ベルトの絵筆の自由さと軽やかさは、 当時の批判家を当惑させた。 「消滅させれば美
術史に空白、 欠落を残さずにおかない、 女性の描いた唯一の作品である」 (G・ムーア)。

スミレの花束への回帰

亡くなる前年に50点という、 彼女の創作歴の中で最多の作品を完成させながら、 1895年、
ベルトはインフルエンザが肺炎に進行して54年の生涯を閉じる。


謝 辞
ベルト・モルゾ年譜
訳者あとがき
文献目録
人名索引
作品索引

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