〔学芸総合誌・季刊〕環――歴史・環境・文明 vol.54 [特集]日本の「原風景」とは何か

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  • 菊大並製 400ページ
    ISBN-13: 9784894349285
    刊行日: 2013/07

われわれが失ってきたものとは何か?



目次

■■ 特集:日本の「原風景」とは何か ■■

〈特別寄稿〉天  石牟礼道子
〈鼎談〉日本の「原風景」とは何か  中村良夫桑子敏雄三浦展
山水都市の流儀〔原風景の呪縛と福音〕  中村良夫
「風土性」から考える日本の思想  オギュスタン・ベルク
白川村にみる縄文の風景  上田篤
縄文人の繊細な野性の現前〔小野忠弘のマテリアルテ〕  西宮紘
心魂の原風景としての神話  能澤壽彦
盛り場から名都へ〔都市計画家・石川栄耀による都市探求〕  中島直人
原風景を「見る」ということ〔建築家の立場から〕  内田純一
東京の原風景  陣内秀信
大阪の原風景  橋爪紳也
京都の原風景  樋口忠彦
東北の原風景〔ボカシの地帯のなかに〕  赤坂憲雄
沖縄の原風景〔サンゴ礁文化と島々の多様性――神歌にうたわれる精神の原風景〕  安里英子
アイヌの原風景〔蕗の薹のカムイ〕  結城幸司
森と神〔おんざきさんと私の過去・現在・未来〕  宮脇昭
農の心象風景〈コラム〉  星寛治

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□□ 小特集:石牟礼道子の世界Ⅴ 生類の悲 〔『石牟礼道子全集 不知火』本巻完結〕 □□

魂だけになって  石牟礼道子
石牟礼さんの小説の世界が、  決定的に違う言葉を持った秘密  町田康

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■■ 新連載 ■■
フランスかぶれの誕生〔「明星」の時代〕  山田登世子
 1 ヸオロンのためいき

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■■ 新連載 ■■
ナダール〔時代を「写した」男〕  石井洋二郎
 1 パリの悪童

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■■ 新連載 ■■
文化人類学者の「アメリカ」  玉野井麻利子
 1 アメリカ人+アルファ(α)

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■■ 連載 ■■
川勝平太連続対談 日本を変える!  川勝平太
 2 日本国家の構造  (ゲスト)山折哲雄

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□□ 対談 □□
生命と人間  中村桂子木下晋

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幻の「尖閣群島測候所」 〔「軍事極秘」文書に見る建設構想とその挫折〕  三木健

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□□ 書物の時空 □□
●名著探訪
市村真一 『地政学で世界を読む』(Z・ブレジンスキー著)
河野信子 『新訓 万葉集』(佐佐木信綱編)
平川祐弘 『アーロン収容所』(会田雄次著)
永田和宏 『鬼の研究』(馬場あき子著)
川満信一 『鈴木大拙全集』

●書評
貝瀬千里 『反アート入門』(椹木野衣著)
倉山 満 『真実の満洲史[1894-1956]』(宮脇淳子著)

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□□ 連載 □□
●旧約期の明治――「日本の近代」の問い直しのために 5
新保祐司 第四章 清沢洌の『外政家としての大久保利通』

●北朝鮮とは何か 2
小倉紀蔵 歴史認識問題の構造

●井上ひさし、または吉里吉里国のゆくえ 4
赤坂憲雄 第三章 伝説と史実のはざまに揺れて

●生の原基としての母性 4
三砂ちづる 「排泄」に応えることから

●小鶴女史詩稿 3(短期集中連載・最終回)
松岡小鶴(門玲子=訳・注・解説) 詩稿

●詩獣たち 11
河津聖恵 すべては一輪の薔薇の内部に〔ライナー・マリア・リルケ〕

●伝承学素描 30
能澤壽彦 『日本開顕』〔天皇論議の精神圏〕


金子兜太の句 日常
石牟礼道子の句 悶絶

関連情報

 渡辺京二に『逝きし世の面影』という一書がある。幕末期に来日した外国人が日本滞在の中で観察した日本の風景描写である。まだ産業化・近代化される以前の日本の美しい風景であり、人間描写だ。
 明治二〇余年以後、国の形も作られ、それ以前の風景がどんどん破壊されてゆく。「文明」という名の町づくり、都市づくりである。日本人はこの百数十年、この?文明?という言葉に酔い痴れ、今日に至ってきた。この間、山は壊され、ゴルフ場やニュータウンに変貌し、清流のある所には、八〇年代以降、ハイテク工場が造られていった。又、南北に長い日本列島に、青森から鹿児島まで新幹線が走り、旧来の在来線の町は火が消えたようになり、駅周辺はシャッター通りとなった。しかも、クルマがこの半世紀で急激に増産され、人が歩く道よりクルマ優先の道路となっていった。これとともに、全国各都市の特色はどんどん失くなり、画一的な町の景色――どこにでもみられるコンビニやスーパー、全国チェーン店、消費者金融の店……――となってしまった。
 日本の「原風景」とは何だろうか?
 原風景は個人的なものかもしれない。しかし、これまでこの山紫水明の風土を抱いて、日本の文化が作られてきたが、今や自らが、この百数十年でこの風土を破壊し、文化をも破壊してきている。
 一昨年の三・一一の東日本大震災でも多くのものが破壊されたが、われわれが望み、自ら選択した近代化、文明化、西欧化が、先人たちによって育まれた文化や風土をどれ程、破壊してきたかがわかる。
 今、われわれが失ってきたものとは何か? その根本となる「原風景」の視点からこの特集を考えてみたいと思う。

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