〔学芸総合誌・季刊〕環――歴史・環境・文明 vol.55 [特集]今、なぜ富士山か

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  • 菊大並製 392ページ
    ISBN-13: 9784894349414
    刊行日: 2013/10

われわれにとって富士山とは何か?



目次

■■ 特集:今、なぜ富士山か ■■

〈写真〉富士山の素顔  大山行男
日本は富士の国  川勝平太
「富士山学」とは何か〔環境保全と観光の共生のために〕  渡辺豊博
富士山が世界遺産となるまでの経緯  近藤誠一
山岳信仰と富士山  安田喜憲
富士山と修験道  鈴木正崇
富士山にかかわる縄文文化と神話伝説  西宮紘
三保の羽衣伝説・試論  遠藤まゆみ
富士山の霊異伝説  遠藤秀男
富士王朝説  原田実
幕末、初代駐日英国公使オールコックの富士登山  佐野真由子
富士山測候所の役割と意義  土器屋由紀子
樹海と富士山  増沢武弘
湧水と富士山  土隆一

国内外の12人が綴る
私にとっての富士山の魅力とは?
高銀(韓成禮訳)/アラン・コルバン(小倉孝誠訳)/ダニー・ラフェリエール(立花英裕訳)/
金子兜太有馬朗人篠田正浩山折哲雄永六輔小倉和夫
奥島孝康黒岩祐治(神奈川県知事)/横内正明(山梨県知事)

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□□ 小特集:岡田英弘とは何者か? 〔『岡田英弘著作集』発刊記念〕 □□

〈鼎談〉岡田史学をどう読むか  宮崎正弘宮脇淳子倉山満
〈寄稿〉川田順造楠木賢道杉山清彦新保祐司

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チベットとウイグルは、どのようにして中国になったのか?
〔『康煕帝の手紙』で読み解く、現代中国の少数民族問題〕  宮脇淳子

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□□ 小特集:今、なぜ横井小楠か □□

小楠残滴  小島英記
私的偶感 『小説 横井小楠』論  藤原作弥
二十一世紀に横井小楠を読みなおす  苅部直
思想史の現在時と思想の「今」  野口武彦
嘉悦氏房評価の謎  松浦玲

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写真で見る水俣病の半世紀
〔『水俣事件 The MINAMATA Disaster』刊行〕  桑原史成

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■■ 連載 ■■
川勝平太連続対談 日本を変える!  川勝平太
 3 新たなルック・イーストの時代  (ゲスト)マハティール・モハマド

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内務省とは何だったのか
〔『内務省の政治史』を執筆して〕  黒澤良

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□□ 小特集:自由を希求した、サンド 〔『ジョルジュ・サンド セレクション』本巻完結〕 □□

ジョルジュ・サンド、自由への道(抄)  M・ペロー(持田明子訳)
ジョルジュ・サンドとアメリカ  持田明子

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■■ かすかな光へ 〔『大田堯自撰集成』来月発刊〕 ■■

〈本書を推す〉 谷川俊太郎中村桂子山根基世まついのりこ
アートとしての教育を〔自撰集成発刊によせて〕  大田堯

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□□ 書物の時空 □□
●名著探訪
市村真一 『試練に立つ文明』(A・J・トインビー著)
河野信子 『母系制の研究』(高群逸枝著)
平川祐弘 『源氏物語』(A・ウェイリー訳)
永田和宏 『トムは真夜中の庭で』(Ph・ピアス著)
川満信一 『龍樹』(中村元著)

●書評
安里英子 『世界の中の柳田国男』(R・A・モース+赤坂憲雄編)

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□□ 連載 □□
●フランスかぶれの誕生――「明星」の時代 2
山田登世子 「明星」というメディア

●ナダール――時代を「写した」男 2
石井洋二郎 ジャーナリズムの青春

●文化人類学者の「アメリカ」 2
玉野井麻利子 人種(Race)

●旧約期の明治――「日本の近代」の問い直しのために 6
新保祐司 第五章 尾佐竹猛の『明治秘史 疑獄難獄』

●北朝鮮とは何か 3
小倉紀蔵 今なぜ日朝正常化か

●生の原基としての母性 5
三砂ちづる 「リスクと不安」から考える

●小鶴女史詩稿 3(短期集中連載・最終回)
松岡小鶴(門玲子=訳・注・解説) 詩稿

●詩獣たち 12
河津聖恵 危機をおしかえす花〔石原吉郎〕

●伝承学素描 31
能澤壽彦 日本神学連盟の精神圏


金子兜太の句 日常
石牟礼道子の句 雲の影

関連情報

芸術、信仰、環境……富士を総合的に捉える。
 2013年6月23日のユネスコ世界遺産委員会において、「富士山」は世界文化遺産に認定された。登録の正式名称は「富士山――信仰の対象と芸術の源泉」である。
 『続日本紀』によると、記録に現れた最古の噴火は、天応元年(781)とされている。それから宝永4年(1707)の大噴火に至るまで、たびたび噴火が繰り返されている活火山である。しかし宝永の大噴火以降三百有余年、噴火は休止している。
 富士山は、われわれ日本人にとって畏怖や祈りの対象であった。古くから『万葉集』『古今集』『竹取物語』をはじめとする文学において取り上げられ、又、修験道や富士講など信仰の対象とされてきた。江戸期には、北斎や広重をはじめ多くの浮世絵が製作され、特に北斎は西欧の芸術界に強力なインパクトを与えてきた。明治以降は、富岡鉄斎や横山大観などの作品が世界に知られている。
 ところが、明治以降近代登山が普及するにつれて登山者が大幅に増え、富士山の自然環境は悪化の一途を辿ってきた。だから、自然遺産ではなく、文化遺産として登録されたのである。
 とはいえ、その山容を見はるかすことのできる土地には、しばしば「富士」にまつわる地名がつけられ、富士山にあやかった「○○富士」も全国各地に見られ、富士山は、つねに日本人が意識せずにはいられなかった存在である。山折哲雄氏のことばを借りれば、現在の「国家の中心は東京、国土の中心は富士」なのである。
 今回の世界文化遺産としての登録決定は、富士山の過去への評価であり、富士山を危機にさらしつつある現在の日本人に対する世界からの強烈な批判でもある。だからこそ、「今、なぜ富士山か」ということが問われねばならない。そういう思いから本特集を企画した。

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