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日本を襲ったスペイン・インフルエンザ――人類とウイルスの第一次世界戦争

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  • 速水融 著
  • 四六上製 480頁
    ISBN-13: 9784894345027
    刊行日: 2006/2

パンデミック研究の圧倒的金字塔! 感染症の世界的流行は、いったい何をもたらすのか? 

約100年前に、世界で第一次大戦の戦死者の約4倍もの死者、国内でも関東大震災の5倍に近い死者をもたらしながら、「スペイン風邪」と呼ばれ、その正確な被害も把握されずに忘却された史上最悪の“新型インフルエンザ”。その全世界への伝播の過程と、日本の被害の実像を歴史人口学の大家が明かす、今こそ必読の一冊。

目次

序 章 “忘れられた” 史上最悪のインフルエンザ


第1章 スペイン・インフルエンザとウイルス

なぜ 「スペイン・インフルエンザ」 か?
インフルエンザ・ウイルスの構造と特徴
新型インフルエンザ発生のメカニズム
ウイルス発見をめぐるドラマ
ワクチンも 「タミフル」 も万能ではない


第2章 インフルエンザ発生  ―― 1918(大正7) 年 春 ― 夏

3月 アメリカ
記録に残る最初の患者 / 第一次世界大戦の戦況とインフルエンザの発生 /
無視された 「春の先触れ」
4月―7月 日本
台湾巡業中の力士の罹患 / ウイルスはどこから来たか? / 軍隊での罹患者の増大
5月―6月 スペイン
800万人が罹患 / 「スペイン・インフルエンザ」 という名称の誕生
7月―8月 西部戦線
西部戦線の異状 / 『京城日日新聞』 のスクープ / 両軍の動きを鈍らせたインフルエンザ /
軍隊から市民への感染拡大
「先触れ」 は何だったのか?
アメリカ西部の兵営を起点に拡散 / 予防接種的な役割を演じる/三週間で世界中に


第3章 変異した新型ウイルスの襲来  ――1918 (大正7) 年8月末 以後

アメリカ
港町で変異したウイルス / 欧州派兵とウイルス / ディベンズ基地で猛威をふるったウイルス /
米軍戦没者の八割はインフルエンザによる病死か? / 当時の状況を描写した詩文 / 文学に記された
インフルエンザと体制への憎悪 / アメリカ国内での感染の拡がり / 流行は1918年に限らない /
少なめに算出された死亡者数 / パニックに陥ったアメリカ社会 / 戦勝気分に酔うその足元で /
貧富の違いによる被害の違い
イギリス
最大の被害をもたらした第二波は6週間でイングランド全土に / 突出した壮年層の死亡者数 /
3つの流行拡大のパターン
フランス
アメリカ軍、 フランス軍、 イギリス軍の順に感染拡大 / 「アポリネール症候群」
補 遺


第3章 前流行  ―― 大正7 (1918) 年 秋 ― 大正8 (1919) 年 春

本格的流行始まる
前流行と後流行 / 従来の記録よりも多い実際の死亡者数 / スペイン・インフルエンザ・ウイルスは
いつ日本に襲来したか? / 軍隊・学校が流行の起点に / 三週間のうちに全国に拡大
九州地方
初期の報道 ――「ブタ・コレラ」、 海外の状況 / 罹患者の急増 / 死者の急増 /
都市から周辺部への感染拡大
中国・四国地方
10月末以降、 死亡記事が急増 / 「予防心得」、 氷の欠乏、 医療体制の不備、 新兵の罹患 /
比較的軽かった中国地方での被害?
近畿地方
被害の大きかった京都・大阪・神戸 / 地域によって異なる流行の再発
中部地方
大都市より中小都市・郡部で蔓延 / 11月に入り、 死者増加 / 後になるほど悪性を発揮 / 被害が
大きかったのは製糸業地帯 / 「鶏の流行感冒」 / 人口1,000名中、 970名罹患、 70名死亡の村も /
生命保険加入推進のチャンス
関東地方
新聞は意図的に報じなかった? / 初発以来数十万人が罹患 / インフルエンザと鶏卵の不足記録
に残された五味淵医師の奮闘 / 前年秋を乗り切った人々が罹患 / 東京府・東京市の対応 /
報道にみる被害の実態
北海道・奥羽地方
他地方より遅れた初発、 その後の状況の悪化 / 鉄道が伝染経路に / 郡部で長引く流行 / 被害が
比較的軽かったと言われる北海道 / 一村全滅の例も
小 括


第5章 後流行  ―― 大正8 (1919) 年 暮 ― 大正9 (1920) 年 春

後流行は別種のインフルエンザか?
前流行と後流行の症状の違い / 前流行と後流行の間の状況
九州地方
後流行の初発 / 「予防の手なし」
中国・四国地方
罹患者の二割が死亡 / 地獄絵を見るような10日間 / 軍隊内での流行
近畿地方
最大の死亡者を出した地域 / 年が改まり、 死者がさらに増大
中部地方
抗体をもたない初年兵に多い罹患 / 2月に死者増大のピーク / 郡部で猛威をふるう
関東地方
初めは軍隊から / 地獄の3週間 / 一割強の死者 / 鉱山町での大きな被害
北海道・奥羽地方
軍隊が流行の発生源 / 秋田県で最小、 福島県で最大の被害 / 交通の要衝地での感染拡大 /
北海道での惨状
小 括


第6章 統計の語るインフルエンザの猖獗

国内の罹患者数と死亡者数
低く見積もられた 『流行性感冒』 における患者数と死亡者数 / 超過死亡 (excess death) による試算
全国の状況
死亡者数の合計 / 月別の死亡者数 / 死亡率の男女差 / 年齢別死亡率
地方ごとの状況
地方ごとの月別インフルエンザ死亡率 / 都市のインフルエンザ死亡率 / 府県別インフルエ
ンザ死亡者数 / 府県別インフルエンザ死亡率


第7章 インフルエンザと軍隊

「矢矧」 事件
最高級の資料 / 上陸許可後に直ちに罹患 / 緩慢な病勢進行と急速な感染拡大 / すでに罹患し
ていた 「明石」 の乗組員 / マニラ到着直後の安堵 / 死者続出の惨状 / 階級による差 / 症状に
関する克明な記録 / 同じように襲われた他の軍艦・商船 / 「矢矧」 の帰還 / ピーク後も未感
染者に活動場所を見出すウイルス
海外におけるインフルエンザと軍隊
地中海派遣艦隊を襲ったインフルエンザ / シベリア出兵とインフルエンザ
国内におけるインフルエンザと軍隊
陸軍病院の状況 / 各師団の死亡者数 / 海軍病院の状況 / 新聞報道
小 括


第8章 国内における流行の諸相

神奈川県
豊富な資料 / 流行の時期 / 流行の初発 / 死者の増大 / /いったん終息、 その後再発 / 後流行
の猛威 / 与謝野晶子が感じた 「死の恐怖」 / 2つの貴重な統計 / 僻地で高い罹患率 / 都市部と
農村部の違い / 郡部で罹患者死亡率の高かった後流行 / 前流行と後流行の相関関係 / 1920年
1月における死者の激増
三井物産
『社報』 も語る死者の増大 / 社員家族を襲った悲劇
三菱各社
流行期に上昇している社員の死亡者数 / 鉱山など生産現場に多い犠牲者
東京市電気局
罹患者の多かった 「春の先触れ」
大角力協会
「角力風邪」 / 「先触れ」 で免疫を得た力士
慶應義塾大学
民間における青年・壮年層の被害の実態
帝国学士院
罹患と外出忌避による欠席者の増加
文芸界
犠牲者 / 文学作品
日記にみる流行
原敬日記 / 秋田雨雀日記 / 善治日誌


第9章 外地における流行

樺 太
漁期に流行 / 最も高い対人口死亡率 / 先住民にも多くの死者
朝 鮮
内地と同時に流行 / 死亡率の高い後流行 / 行政は何をしたのか? / 免疫現象の確認 /
統計資料の問題 / 朝鮮での前流行の犠牲者は約13万人 / 朝鮮での死者の累計は約23万人 /
三・一運動とスペイン・インフルエンザ
関東州
本地人により大きな被害 / 関東州でも死亡率の高かった後流行
台 湾
台湾中に拡がり先住民も罹患 / 台湾でも軍隊を起点に流行 / 本地人と内地人 (日本人) の間
の被害の差 / 死者は多いが、 短期間で過ぎ去った流行 / 先住民の被害
小 括


終 章 総括・対策・教訓

総 括
内地45・3万人、 外地28・7万人、 合計74万人の死者 / 日本内地の総人口は減少せず /
流行終息後の第一次 「ベビーブーム」 / なぜ忘却されたか?
対 策
人々はインフルエンザにどう対したか? / 謎だった病原体
教 訓

あとがき

資料1 五味淵伊次郎の見聞記
資料2 軍艦 「矢矧」 の日誌

新聞一覧
図表一覧

関連情報

速水融さん09年度文化勲章受章

日本の歴史人口学の第一人者である速水融さんの、これまでの学術分野における日本の文化の発展に関して飛び抜けた功績を高く認められ受章されたこと、心よりお祝いを申し上げます。

速水融さんは、日本に歴史人口学を導入され、江戸時代の宗門改帳から一般庶民の生き様を追求し、家族の歴史を通して近世日本の社会経済史の実像を浮き彫りにされました。

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