- 大田堯・山本昌知 著
- 新版に寄せて=永田和宏
- B6変並製 304頁
ISBN-13: 9784865785043
刊行日: 2026/7
“ひとなる”とは、「人間らしい人間になる」をめざすこと
お互いに“ちがう”人間どうしが、“かかわる”中で“変わって”ゆくこと――“ひとなる”を根本に据える教育研究者、大田堯。枠にあてはめ、鍵をかけ閉じ込めようとする精神医療でなく、患者さんの生きてきた体験を見つめ、人間どうしの関係の中で生きる道を見つけてゆこうとする精神科医、山本昌知との、ひびきあう対話。
【新版に寄せて】永田和宏「〈隙間〉の大切さのことなど」
目次
【目次】
新版にあたって 山本昌知
はじめに 大田堯
Ⅰ 「ひとなる」とは 大田堯
1 「教育」と民主主義
日本民主主義の未熟さ、自分の弱さ/第一次安倍政権による旧教育基本法の改定/教育基本法の成り立ち/日本の近代化と教育/「教育」は「エデュケーション」の正しい訳か?/学問と教育/東アジアの新しい連帯の創出を/「エデュケーション」とは
2 「教育」と「学習」
まず教育からではなく、学習から/生きものの根源は、ちがう・かかわる・かわる/生活綴方/戦後における教育と学習/「学び舎」の教科書/聞き上手の学力
3 アートとは何か
アートとしての教育/「読みかたり」はかかわること/大きな学校・小さな学校/生命にかかわる仕事の価値を高める社会に/医療・教育・福祉の共通点/就業社会をめざして
Ⅱ ちがう・かかわる・かわる――教育研究者と精神科医の対話 大田堯・山本昌知
1 ちがう――生きてあるということ
映画「かすかな光へ」に出会って/地域の中での精神医療/人は存在することに意味がある/実践とは再現不可能なもの/科学と制度の恩恵と限界/「いや」と言えない子どもたち/相互作用のある関係を構築する/かかわることと変わること
2 かかわる――精神医療と教育の現場で
「こらーる岡山」の「間」/「なんにもセンター」が主体性を育てた/生きものは自分で変わる/平和の反対は無関心/他者を変えることはできない/専門家はどう貢献してきたのか/からだの病とこころの病/雇用と被雇用、教える者と教えられる者の関係を乗り越える
3 かわる――人間性を回復するためのかすかな光
エリート一族に育った永井さんの生い立ち/永井さんの「役割をきちんと果たす」性格/居場所と出番を探し、人間性を回復する/人を信じることで、こころにゆとりが生まれる/サークルでひととき自分の時間を取り戻す/患者と伴走し、苦しみをともにする/生と死は循環系である/野田さんの死と、死後に見えた生き方/対症療法ではなく患者の人生の流れの中で見る/医療も教育も「アート」である
[補]「こらーる岡山」の患者たち 山本昌知
あとがき 山本昌知
大田堯
新版に寄せて 〈隙間〉の大切さのことなど 永田和宏
関連情報
「生きてきた体験の中に、本来の自分がある。その本人らしさを回復していかなければいけないのに、それを壊すような医療では解決になりません」 (山本昌知)
「医療も教育も心と心のひびきあいなんですよね。教師や親も子にたいしては、一人の独立したちがう人間としてつきあっていかなければならないという、共通の大きな課題をもっているのではないかと思います」 (大田堯)
著者紹介
●大田堯(おおた・たかし)
1918年広島県生まれ。教育研究者(教育史・教育哲学)。東京帝国大学文学部卒業。東京大学教育学部学部長、日本子どもを守る会会長、教育科学研究会委員長、日本教育学会会長、都留文科大学学長、世界教育学会(WAAER)理事、北京大学客座教授などを歴任。東京大学名誉教授、都留文科大学名誉教授、日本子どもを守る会名誉会長。2018年12月没。
単著に『教育の探求』(東京大学出版会)、『教育とは何か』『教育とは何かを問い続けて』(岩波新書)、『地域の中で教育を問う』(新評論)他多数。現在の教育状況を憂えて、2013年から『大田堯自撰集成』(全4巻・補巻1、藤原書店)を刊行。
2011年には、その思索と行動の軌跡を追った映画『かすかな光へ』が完成(製作・著作:ひとなるグループ 監督:森康行 音楽:林光 詩・朗読:谷川俊太郎 ナレーション:山根基世)。2026年6月現在、全国1000カ所以上での自主上映とともに、DVDを発売中。(http://kasuka-hikari.com/)
●山本昌知(やまもと・まさとも)
1936年岡山県生まれ。1961年岡山大学医学部卒業。岡山県立病院(当時)、尾道市青山病院勤務を経て、1972年に岡山県精神衛生センター(当時)の所長に就任。青山病院時代の1969年から「精神病院の鍵は誰が締めているのだろうか」「どんな意味があるのだろうか」をテーマに、入院患者、看護者と話し合いを重ね、閉鎖病棟の鍵を開ける取り組みを始める。1997年、同センターを希望退職後、無床診療所「こらーる岡山」を開設。同代表を務めた。2008年、「こらーる岡山」を舞台とした観察映画『精神』が公開、2020年には映画『精神0』(いずれも監督・想田和弘)が公開。著書に『人薬』(想田和弘との対話、藤原書店)など。2024年、岡山県三木記念賞を受賞。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです