- 南明日香 著
- 四六上製 416頁・カラー口絵4頁
ISBN-13: 9784865785128
刊行日: 2026/10
〈ジャポニスム〉を補助線に読み解く『江戸藝術論』の真価
19世紀後半、欧米のジャポニスムの隆盛を現地で経験した永井荷風は、帰国後に数々の浮世絵論を発表、『江戸藝術論』に集成する。
縦横に引用・紹介される浮世絵作品や外国人著者を丹念に追跡・解読しつつ本書を詳解し、〈ジャポニスム〉の受容・相対化・深化を踏まえ、荷風が到達した〈ポスト・ジャポニスム〉の日本文化論の核心に迫る。
目次
まえがき――永井荷風『江戸藝術論』再評価のために
第一章 〈ジャポニスム〉の歴史的流転――『江戸藝術論』誕生前後の知の伏流
第二章 〈ジャポニスム〉の潮流の中の荷風――『江戸藝術論』までの階梯
第三章 荷風『すみだ川』を浮世絵版画で読む――江戸藝術の創作的実践
第四章 『江戸藝術論』詳解――ポスト・ジャポニスムの浮世絵研究
附録 永井荷風「仏国文豪の浮世絵研究」(全集未収録)解説と翻刻
あとがき――本書の成り立ちについて
注/基本参考文献/図版一覧/主要人名索引/英文要旨
関連情報
永井荷風(1879~1959)の評論集『江戸藝術論』は、不思議な書物である。
岩波文庫では本文約160頁という簡潔な体裁をとり、内容はほぼ浮世絵版画に関する論考で占められている。とはいえカヴァーに歌川広重の版画が用いられているものの、本文中に図版はない。文語を基調とする文体に加え、多数の絵師に関する情報や膨大な外国人名やその翻訳文が縷々引用されており、必ずしも読みやすい書物とは言いがたい。
こうした特徴は初版本の『江戸藝術論』(春陽堂、1920年3月)においても同様であり、カヴァーがないだけに、いっそう把握しにくい印象を与える。しかしながら同書は、現代の美術史学の水準から見れば検討を要する点を含んでいるとしても、作品鑑賞の表現力において高い評価を受けてきた。またジャポニスム研究の文脈においても、言及される文献の一つである。
本書では『江戸藝術論』を、永井荷風個人の嗜好や単なる浮世絵論としてではなく、〈ジャポニスム〉という越境的かつ歴史的な問題系からとらえ直すことを目指す。この補助線を用いることで、荷風の思想と実践の複層性を明らかにし、文学研究と美術史研究を架橋する新たな理解の提示を試みる。ひいては、〈ジャポニスム〉をめぐる言説空間の中で、荷風の価値基準と実践の在り方を再考するための一つの道標となることを期したい。 (「まえがき」より)
著者紹介
●南明日香(みなみ・あすか)
1961年生。早稲田大学第一文学部卒業、同大学大学院文学研究科博士課程満期退学、フランス国立東洋言語文化研究院(INALCO)で博士号を取得。早稲田大学比較文学研究室助手、フランス国立東洋言語文化研究院教官を経て、現在相模女子大学学芸学部教授。専門は日仏比較文学・比較文化。
著書に『永井荷風のニューヨーク・パリ・東京――造景の言葉』(翰林書房)、『荷風と明治の都市景観』(三省堂)、『ル・コルビュジエは生きている――保存、再生そして世界遺産へ』(王国社)、『国境を越えた日本美術史――ジャポニスムからジャポノロジーへの交流誌 1880-1920』(藤原書店、第36回ジャポニスム学会賞受賞)、編著書に『パリという首都風景の誕生――フランス大革命期から両大戦間まで』(ぎょうせい)、翻訳書にミカエル・リュケン著『20世紀の日本美術――同化と差異の軌跡』(三好企画)。ジャポニスム学会、日本近代文学会、日本比較文学会、フランス日本研究学会(SFEJ)所属。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです