- 趙博 著
- 序=ラサール石井・金守珍
- 四六並製 264頁・カラー口絵4頁
ISBN-13: 9784865785135
刊行日: 2026/10
「日韓・日朝の歴史の間で生きている我々は、こんがらがった紐を一つ一つ解いていく他ない」――金守珍
「死者への明るい鎮魂」――ラサール石井
1942年「長生炭鉱」水没事故、犠牲者183人(うち朝鮮人鉱夫136人)。
なぜ死者たちは、海の底に残されたままなのか?
戯曲全文に加え、日本の戦争・植民地をめぐる「講義」を通じ、“事故”の背景・歴史、そして現在をわかりやすく解説。
●「新宿梁山泊」2026年公演戯曲『海底骨歌』全編収録
目次
〈刊行に寄せて〉
「書き、歌い、演じる巨人・パギやん」ラサール石井
「歴史の間と「在日」の地層」金守珍
はじめに
第一講 水非常とは何か
第二講 「刻む会」の結成とその足跡
第三講 炭鉱と朝鮮人労働者
第四講 今に続く「植民地主義」
第五講 鎮魂から未来へ
戯曲『海底骨歌』
あとがき
巻末資料
・山口武信「炭鉱における非常――昭和十七年長生炭鉱災害に関するノート」
・小池晃「質問主意書」/高市早苗「答弁書」
・犠牲者名簿
主要参考文献
関連情報
山口県宇部市西岐波の床波海岸。その沖合には、かつて長生炭鉱という海底炭鉱があった。現在も、2本の巨大なコンクリート製の建造物が海面から突き出ている。「ピーヤ」と呼ばれる排気・排水筒で、その下に炭鉱の坑道と切り羽があったという証拠だ。
1942年2月3日の午前9時ごろ、悲劇は起きた。海岸の坑口から約1キロ沖合の海底坑道で、異常出水が発生した。海底が抜けて、大量の海水が坑道内へ一気に流れ込み、短時間のうちに坑内は水没した。このような坑内への大量出水による水没事故を、炭鉱用語で“水非常”という。
事故によって183人が生き埋めになり、犠牲となった。その内訳は、朝鮮人労働者136人、日本人労働者47人、つまり犠牲者のおよそ4分の3が朝鮮人だった。また「47人の日本人」の5人がウチナーンチュ(沖縄出身者)であることが、判明している。坑内に閉じ込められた人々は、救出されなかった。183人の遺体が収容されないまま、坑口は塞がれ、長生炭鉱は海の底に閉ざされた。
事故から80年以上が過ぎても、犠牲者の遺骨は海底に残され続けてきた。この「帰れなかった死者」という問題は、長生炭鉱の水非常を単なる労働災害にとどまらない歴史的課題へと押し上げている。 (本文より)
著者紹介
●趙博(ちょう・ぱぎ)
1956年大阪市西成区生まれ。“浪花の歌う巨人・パギやん”の異名をとる歌手・
役者・物書き。
神戸市外国語大学ロシア学科卒業後、大学と予備校の講師を20年務める。CD『ソ
リ・マダン』『百年目のヤクソク』『怒!阿呆陀羅経』『ワテらは陽気な非国民』
『創作浪曲 医師・中村哲』、DVD『百年を歌う』『実録!難波屋投げ銭ライヴ』
『パギやん浪曲選①』、著作『ぼくは在日関西人』『パギやんの大阪案内』『
「在日」無頼控』、絵本『グーチョキパーのうた』(絵・長谷川義史)など、多
数。一人芝居《声体文藝館》シリーズを各地で公演、最近の出来は『ヒロシマの
母子像/四國五郎と弟・直登』。2011年から「新宿梁山泊」の作家兼俳優として、
『百年、風の仲間たち』『娼婦・奈津子』『奇妙な果実/マルコムXと金嬉老』
『失われた歴史を探して』などを手掛ける。映画『かば』『金子文子と朴烈』
『福田村事件』『ぴっぱらん』などに出演。2024年、自身の記録映画『だぁほ!!~
パギやん、愛[サラン]と怒[プンノ]の遺言』(監督・大須賀博)が公開された。
ホームページ http://tamazo.org
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです