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大地よ!――アイヌの母神、宇梶静江自伝

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  • 宇梶静江著
  • 四六変上製 448頁
    ISBN-13: 9784865782615
    刊行日: 2020/02

アイヌとして生き、アイヌの精神性を問う、女の一生。

昭和三陸地震(一九三三年三月三日)のさなかに生を授かり、幼年期から思春期、和人から差別を受けつつも、北の大地=アイヌモシリの自然の中で父母の慈愛に包まれて、貧しいながらも豊かな時を過ごした少女時代。勉学を志して二十歳で札幌の中学へ。中学校卒業後、東京へ。
高度成長期、東京で結婚、そして出産。溢れかえる物質文明の中で、自分が求めてきたものは何かと懊悩する日々。そこから詩を書き始め、壺井繁治らと出会う。一九七二年二月八日の『朝日新聞』の「生活欄」に投稿した「ウタリたちよ、手をつなごう」が掲載され大反響となる。
やがて六十三歳にして世界で初めて〝古布絵〟によるオリジナルな表現手法を発見し、作品制作の活動に入る。アイヌとして生きる女性が、自らの内なるアイヌ、内なる大地を切り拓き、その生涯をかけてアイヌの精神性を問うた軌跡。

いま私たちは、現代文明のなかで、人間とは何か、人間らしい生き方とは何かを問われています。私はアイヌとして、そうした問いに誠実に向き合いたいと思います。
アイヌの精神性は現在地球が抱えているさまざまな困難に光を投げかけることができると思っています。その光はアイヌのみの光ではなく、世界に存在する三億の先住の民の光でもあると思います。そして、その先住の民の光は、人間であることの根源から生まれてくる光なのだと思います。
(二〇〇一年四月二十五日 ハーバード大学アダムスハウスにおける講演より)

目次


〈詩〉大地よ――東日本大震災によせて/アンコロ モシリ(アイヌ語訳)

Ⅰ アイヌとして生きる

 1 幼年時代
  大地震の中での誕生/姉茶の村里/浦川の家系/父と母/ベンエカシと従叔母/
  伊達のおっちゃん/変った子だった私/北海道の春と夏の大自然/大きな火の玉と
  星空への幼少期の記憶/父は私の誇り

 2 貧しい暮しの中で――小学生時代
  小学校への入学/小学校の先生たちのこと/夏場の浜辺での暮し/戦時下、四人
  の子どもを預かる/アイヌの貧しさと奉公と悲劇/海辺の住まいと姉茶の住まい/
  人になつきにくい子だった私/夏の川遊びと空襲

 3 父母の仕事と慣習
  父の昆布採りの仕事/冬場の父の山仕事と里で待つ家族/姉茶での牛の世話/
  山での薪とりと遊び呆け/父が農業への転業を決断する/田圃での春夏秋の仕事
  /戦時下の学校と生活困窮/ツッピアーニ(交換)という習慣

 4 アイヌの食文化――記憶から
  アイヌの食文化/干し魚のおやつなど 魚をきれいに食べる父/キノコおよびレバー
  /戦時中の食の困難/ラダシケップ(混ぜもの)/鮭、タカノハ、蛸

 5 アイヌ差別の実体験を通して
  アイヌ差別の原体験/政府のお墨付を頂いての移住民たち/先住民アイヌの居場
  所無き歴史/「北海道旧土人保護法」によるアイヌの同化政策/大きな罠を仕掛け
  られたアイヌ民族/国民学校での差別/差別される日々/差別の理不尽さ、根深さ
  /早死にするアイヌたちは多かった

Ⅱ 学びへの目覚め

 6 敗戦直後の時代
  母の激しい一言/学歴のない悲哀/時代を深くは意識せず/物のない戦後の生活
  /結婚をしたいという気持ちは湧かず/飢えた子どもたちを我が家へ迎える/冬の
  間に和裁・洋裁を習得する

 7 女優への憧れと行商体験
  盆踊り、秋祭り、正月の楽しみ/山椒の実を摘む山中で、シマフクロウに出逢う/
  村の青年団での演劇活動/女優への憧れと宇野重吉先生/貧しくても支えあって
  生きてきた/和人の妊婦に新しい服をあげる/行商体験――蒲鉾、タラコ、キンメダ
  イを売る/『ゲーテ詩集』とそろばん

 8 姉の死
  父の家族思いと私/美しいものに魅せられて/父が娘に語る「一度も実現しない
  約束」/二歳上の兄嫁妙子さん/姉の流転と悲劇/姉二十六歳、冬の朝に逝く
  /要ちゃんとの淡い交流/女友だちの悲しみと早世

 9 二十歳で、中学校へ
  学校へ行きたい/札幌での充実した北斗中学時代/忘れられない知里真志保先生
  の御恩

Ⅲ 詩作、そして古布絵の世界へ

 10 アイヌモシリを離れて東京へ
  一九五六年三月、東京へ/喫茶店勤めから結婚へ/東京での読書生活
 11 詩的表現への目覚め
  『詩人会議』でのデビュー/浦川恵麻として詩を書く

 12 アイヌとしての叫び
  一九七二年、東京で『朝日新聞』「生活欄」に投稿――アイヌ同胞への呼びかけ/
  「呼びかけ」以降の苦悩/朝まで〝ゴーゴー〟を踊る

 13 六十三歳で古布絵を発見
  「古布絵」との出会い/出会いと縁によって開けた世界――アイヌの表現者として起つ
  /アイヌのファッションショーの思い出

 14 世界の先住民族として
  久しぶりの詩作――イフンケ(母地球)/ハーバード大学での講演/海外歴訪の日々
  と先住民としての自覚/日本初の先住民族サミット

 15 アイヌの伝統文化と私
  夢の中のお告げ/アペフチカムイと「炭焼きエカシ」/ご先祖様の供養(イ・チャルパ)
  /トゥス(アイヌの巫術)/昔のカムイノミの特徴と力/アイヌ語とアイヌ文化の衰退
  /イタック好きの母/アイヌの語り、歌のリズム、風の読み/アイヌの刺青/格好よ
  く優しい人たち/三信鉄道開通に助力したアイヌ/蠣崎家の末裔との出会い

 〈追記〉 アイヌの調査にからむ児玉作左衛門氏との経緯

 16 アイヌの精神性――ユーカラ、そしてイオマンテ
  「旧土人保護法」とアイヌの土地/羆獲りの一族とアイヌ/姉茶最後のイオマンテを
  目撃/「アイヌの行事に、リハーサルはいりません」/ユーカラを好んでいた父母/
  アイヌの精神性とカムイノミ/リミミセの異様な声/ペウタンケ(神様への抗議)の雄
  叫び/アイヌの葬儀と深い悲しみ/アイヌの幾つかの言い伝え

Ⅳ 大地よ!

 17 問われる現代文明
  二〇一一年――大きな節目の年の出来事/アイヌの内なるエネルギー/自然は語
  る、大樹は語る/親(宇宙、地球)が私たちに教える/伝えるために/大地に迫る危
  機/幸せの糸口をつかむために/アイヌが消えないための取り組み

 18 大きな導きと祈りの中で
  先住民指導者たちも、神々との対話を許された/アイヌの仕事と生活を営むことが、
  アイヌ民族の精神性

 19 アイヌよ、今こそ立ち上がる時だ
  語るより、実行で訴えたい/大地、火、水、風などを神としたから生きられた/今、
  アイヌのエネルギーが動き出している/私は、カムイに尽くして死にたい/何者か
  が私を導いてくださる/民族の今後への祈り

あとがき

宇梶静江関連年譜(1933–2020)

【著者紹介】
●宇梶静江(うかじ・しずえ)
1933年北海道生まれ。幼少期を北海道浦河郡の姉茶村の和人も混在するアイヌ集落で過ごす。1956年札幌にある私立北斗学園中等科を卒業。卒業直後に上京、1959年に結婚。二児の母となる。
1966年から『詩人会議』同人となり詩を書く。1972年2月8日、『朝日新聞』の「ひととき」欄に「ウタリたちよ、手をつなごう」の投稿が掲載されて反響を呼び、首都圏在住のアイヌ結集の契機となり、翌年「東京ウタリ会」を設立。
1996年、アイヌ伝統刺繍の技法を基に、ユーカラに語られてきたアイヌの叙事詩を、古布絵として表現するオリジナルな手法を確立。以後、古布絵作家としての活動を展開。米国、オーストラリア、ドイツ、ロシア等海外の先住民とも交流を重ねる中で、世界の先住民としてのアイヌへの思いを新たにする。
2011年、古布絵作家としての活動が評価され、吉川英治文化賞を受賞。東日本大震災を契機とした詩作品「大地よ」が評判となる。以後も先住民としてのアイヌを意識した活動を続け、今日に至る。
著書に『シマフクロウとサケ』(2006年)、『セミ神さまのお告げ』(2008年、以上は福音館書店)、『すべてを明日の糧として――今こそ、アイヌの知恵と勇気を』(清流出版、2011年)詩集『ヤイコイタク ひとりごと』(宇梶静江詩集刊行会、2011年)などがある。

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