- 岡洋樹 著
- 岡田英弘 監修
- A5上製 440頁
ISBN-13: 9784865784886
刊行日: 2026/3
遊牧社会の“統治”と“移動”の実像を描いた初の成果!
定住農耕社会と異なる“遊牧社会の統治”とは!?
マンジュ(満洲)人が17世紀前半に建国した清のもとで、「外藩」(外なるモンゴル)と呼ばれていたモンゴル。モンゴル語・マンジュ語でも記された清朝期の文書史料から、中国と異質な統治文化をもつ“遊牧社会の統治”の実像をあぶり出す!
そして清支配下であってもモンゴル人出稼ぎ者やラマ(チベット仏教僧)たちが“越境移動”していたことを示す。
目次
序章 清代モンゴル史の課題――史料と問題点
第1部 「外なるモンゴル」とは何か?――清朝の「外藩」統治
第1章 北元から清へ――清の外藩統治の歴史的経緯
第2章 「外なるモンゴル」という統治範疇――制度史的考察
第3章 随丁(ハムジラガ)の起源について
第4章 清代モンゴルにおける旗籍離脱と清朝統治――ウラド後旗と広覚寺の属民争奪の経緯からみた旗民の地位
第2部 乾隆期のモンゴル支配――ハルハを事例として
第1章 乾隆帝の対ハルハ政策とハルハの対応
第2章 第三代ジェブツンダムバ゠ホトクトの転生と乾隆帝の対ハルハ政策
第3章 乾隆三十年のサンザイドルジ等による対ロシア密貿易事件
第4章 イヘ・フレーの辦事大臣について
補論 殿版『蒙古源流』とツェングンジャヴ
第3部 モンゴル人の越境移動――家畜窃盗裁判記録を読む
第1章 清代モンゴルにおける人の移動
第2章 越境移動の諸相
終章 「外なるモンゴル」と清
関連情報
南の定着農耕文明に対峙した遊牧民の歴史を、その内側から理解するためには、遊牧民が自ら残した史料の存在が不可欠である。そのような条件が満たされるのが、17世紀以後、まさに最後の「征服王朝」たるマンジュ(満洲)の清朝の支配下にあった時代のモンゴルなのである。
この時代、モンゴル文・マンジュ文の文書史料が作られ、モンゴル国や中国の文書館に残されている。当時のモンゴルは、まだ遊牧生産を主な生業としており、それを基盤とした社会の構造があり、行政統治が営まれていた。だから清の時代のモンゴルは、遊牧民の歴史の理解に大きな寄与をなすことができると思われる。
清の時代は17世紀から20世紀初頭に及ぶ。20世紀の前半、東北アジアは激動を経験したが、モンゴルは焦点の一つだった。その歴史展開の初期条件をなしたのが清の時代なのである。その意味でも、この時代のモンゴルを理解することには、大きな意義があると言えるだろう。 (本書「はじめに」より)
■
清朝史叢書とは――
1636年に万里の長城の北側の瀋陽で建国され、1911年に中国南部で起こった辛亥革命の結果、翌1912年に崩壊した清朝は、これまでふつう「秦漢以来の中国王朝の伝統を引き継ぐ最後の中華王朝である」と見なされてきた。しかし、この視点は正確ではない。それはなぜかというと、清朝の支配階級であった満洲人の母語は漢字漢文ではなく、アルタイ系言語である満洲語であったこと、広大な領域を有した清朝の領土の四分の三が、同様に漢字漢文を使用する土地ではなかったからである。
276年間続いた清朝の統治下では、モンゴルやチベットや新疆などを含めた帝国全土に通用する言語は満洲語のみで、公用文書の大部分は満洲語か満漢合璧(並記)で書かれた。(…)
本叢書すべてを読了した暁には、清朝を全体として深く理解できるようになることは間違いない。 (岡田英弘)
著者紹介
●岡洋樹(おか・ひろき)
1959年生。専攻は東洋史、モンゴル史。早稲田大学大学院文学研究科単位取得退学。博士(文学)。東北大学東北アジア研究センター教授(2006~25年)。東北大学名誉教授。2016年、モンゴル国より北極星勲章授章。
著書に『清代モンゴル盟旗制度の研究』(東方書店、2007年)他。編著に、『歴史の再定義 旧ソ連圏アジア諸国における歴史認識と学術・教育』(東北大学東北アジア研究センター、2011年)、『移動と共生の東北アジア 中蒙露朝辺境にて』(東北大学東北アジア研究センター、2020年)など。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです