- 加藤タケ子・小林繁・野澤淳史 編著
- A5並製 320頁
ISBN-13: 9784865784947
刊行日: 2026/4
いまだ終わらぬ「水俣事件」を問う。
「患者さんや母親たちの声は人間の宝ですから」――石牟礼道子
母の胎内で有機水銀を浴び“水俣病“患者として生まれてきた人びと。水俣病が「公式確認」された1956年以降も垂れ流され続けた毒により、逃げることのできない被害をこうむり、文明の負の面を一身に背負った彼らは今、60~70代。彼らの「生の声」、そして彼らの生活の場をつくり、寄り添い、支え続けてきた人びとの歩みの全記録。 題字=鬼塚勇治
目次
はじめに 野澤淳史
第Ⅰ部 胎児性水俣病患者の叫び
〈座談会1〉胎児性患者からのメッセージ――「花が綺麗と思えるようになった」
松永幸一郎 金子雄二 永本賢二 長井勇 加賀田清子 協力=加藤タケ子 司会=藤原良雄
〈座談会2〉受難に磨かれた母たち 胎児性患者家族会――水俣にコロニーを 「自立したい」訴え切実
長井チカエ 永本マサエ 川野ゆう子 金子スミ子/石牟礼道子 加藤タケ子
襟を正して聞く 人間を思う心――家族会に参加して 石牟礼道子
「家族会」の8年 加藤タケ子
〈座談会3〉自立した一人の市民として――「ほっとはうす」のなかまたちの挑戦
加賀田清子 金子雄二 長井勇 松永幸一郎 渡辺栄一 山添友枝 永本賢二 協力=加藤タケ子 司会=藤原良雄
胎児性患者50代、ケアホーム建設に挑戦 加藤タケ子
栄子理事長の志を宝物として――「人が大好き・水俣が大好き」 「ほっとはうす」一同
胎児性の課題 さらに深刻に 加藤タケ子
祈りの言葉 永本賢二
公式確認半世紀と6年目の水俣から――世界に発信する祈りの言葉 加藤タケ子
お父さん、ありがとう!――私が水俣病を自覚した時 永本賢二
第Ⅱ部 胎児性患者をめぐる歴史
第1章 胎児性患者たちから見える水俣――「ほっとはうす」前史 野澤淳史
第2章 「ほっとはうす」の誕生 小林繁・加藤タケ子
第3章 「ほっとはうす」から「きぼう・未来・水俣」へ 小林繁・加藤タケ子
第4章 「水俣病がある」風景――「ほっとはうす」が描き出してきたもの 野澤淳史
第Ⅲ部 証言 胎児性患者とともに
「ほっとはうす」と私 吉井正澄
「水俣病問題懇談会」提言を終えて――環境省の干渉で不完全に 解決には総理の決断が 吉井正澄
〈インタビュー〉「立ち上がった被害者の勇気と苦労を忘れるな」――原田正純さんとの最後の対話 原田正純 聞き手=高峰武
〈インタビュー〉「水俣病患者」を超えて――「ほっとはうす」がめざすこと 加藤タケ子 聞き手=藤原良雄
人間の行く末について真剣に考えている人たち 加藤タケ子
2013年の出来事……天皇皇后両陛下と胎児性患者の面会 加藤タケ子
60代に新しい活動に挑戦する、生き抜くいのちの逞しさ! 加藤タケ子
あとがき 加藤タケ子
本書関連年表(1991~2026年)
初出一覧
関連情報
■1956年5月1日に公式確認された水俣病は、2026年で70年の節目の年を迎える。本書は、それとほぼ同じ時間の長さを生きてきた胎児性水俣病患者たちの声をまとめた本である。胎児性患者という人類史上初の被害者が、なぜ「宝子(たからご)」なのか。そして、なぜその「叫び」なのか。
■胎児性水俣病という人類史上初の経験であるがゆえに、その被害者は、水俣病を超えて、公害・環境問題の悲惨さを象徴する存在とされてきた。もちろん、公害事件水俣病の解決を考える文脈の上では、そうでなければならない。だが、ゆえにこそ、「胎児性患者の◯◯さん」という名づけでしか語られてこなかった。
■本書は「宝子の叫び」を通して、「人間として生きる道」を求め続けてきた胎児性患者たちの試行錯誤の軌跡を描こうとするものであり、そこから、杉本栄子の言葉を借りれば「人として、生まれてきてよかったと思う」という気持ちを水俣病の一つの側面として浮かび上がらせたいと考えている。 (「はじめに」より)
編著者紹介
●加藤タケ子(かとう・たけこ)
1950年生。東京都出身。一般社団法人「きぼう・未来・水俣」代表。1988~89年、未認定患者らのチッソ水俣工場前の座り込みに参加。その後水俣に移住。92年、「カシオペアの会」結成、胎児性患者の支援に関わる。98年、任意の共同作業所「ほっとはうす」を設立。2003年、社会福祉法人の認可を受ける。20年、一般社団法人「きぼう・未来・水俣」設立、代表となる。著作に『水俣・ほっとはうすにあつまれ!――働く場そしてコミュニティライフのサポートへ』(共編、世織書房、2002年)ほか。
●小林繁(こばやし・しげる)
1954年生。福島県出身。明治大学名誉教授。専門は社会教育。「ほっとはうす」創設時の法人理事、現在「きぼう・未来・水俣」の顧問。著作に、『障害をもつ人の学習権保障とノーマライゼーションの課題』(れんが書房新社、2010年)、『地域福祉と生涯学習――学習が福祉をつくる』(編著、現代書館、2012年)、『障害をもつ人の「自立」と人権――学びと就労のために』(現代書館、2024年)ほか。
●野澤淳史(のざわ・あつし)
1982年生。東京都出身。東京経済大学現代法学部准教授。専門は環境社会学と障害学。著作に、『胎児性水俣病患者たちはどう生きていくか――〈被害と障害〉〈補償と福祉〉の間を問う』(世織書房、2020年)、「被害補償と介護保険の交差点――胎児性水俣病患者(も)が高齢化した時代における加害者の責任」『環境と公害』53(4)(岩波書店、2025)、ロルフ・リドスコーグ&ヨーラン・スンドクヴィスト『環境社会学』(翻訳、世織書房、2025年)ほか。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです