グリーン成長は可能か?――経済成長と環境対策の制度・進化経済分析

価格: ¥3,080 (税込)
[ポイント還元 123ポイント~]
数量:
在庫: 在庫あり

返品についての詳細はこちら

twitter

  • 大熊一寛
  • A5上製 168ページ
    ISBN-13: 9784865780130
    刊行日: 2015/05

環境対策と経済成長は両立しうるか?

地球環境の危機が顕在化する一方で、経済成長を求める力はグローバルな資本主義の下で一層強まっている。
環境対策と経済成長の関係に、制度と進化の経済学――レギュラシオン理論とポスト・ケインズ派理論からアプローチし、未来を探る野心作。


目次

はじめに
 経済成長と環境対策をめぐる思考の分断をこえて/制度と進化の経済学からのアプローチ/
 理論的枠組みの構築と歴史的な実証分析/本書の構成

序章 問題認識とアプローチ
 1 経済と環境の関係の歴史的な変化
 2 制度と進化の経済学からのアプローチ

第1部 理論分析
第1章 社会経済システムを経済・人間・自然環境の再生産として理解する
 1 経済・人間・自然環境の三つの再生産の概念
 2 三つの再生産に基づく生産システムの定式化
 3 環境対策とその費用の概念
 4 環境対策費用の定式化

第2章 制度的調整と成長レジーム
 1 6番目の制度形態としての「経済・環境関係」
 2 制度的調整の動態
 3 危機と制度階層性の下での制度変化
 4 成長レジームとの関係

第3章 環境経済分析のためのカレツキアン・モデル
 1 環境対策費用と地代を組み込んだ基本モデル
 2 資源輸入国のモデル
 3 動学的な効果に関する分析
 4 長期的関係についての考察

第2部 日本における長期的変化
第4章 環境関係費用による分析
 1 環境関係費用の長期推計
 2 時期ごとの経済・環境関係の特徴

第5章 環境対策の経済効果の計量分析
 1 モデルの調整及び係数の推定
 2 期間毎の分析
 3 今後の環境対策の効果についての考察

第6章 経済と環境の関係の長期的変化の解釈
 1 1960年代から1970年頃まで
 2 1970年頃から1980年代前半まで
 3 1980年代前半から1990年頃まで
 4 1990年代から2008年頃まで
 5 2008年頃以降
 6 長期的な変化

終章 未来への展望
 経済システムの制度的調整の必然性と直面する困難/空間的・時間的乖離を乗り越える制度形成の可能性/
 様々なレベルでの取り組みの前進/成長レジームとの関係とグリーン成長の可能性/
 外延的拡大の限界と危機/真の豊かさのための経済領域/幅広い連合と未来を見据えた橋頭保づくり/
 第二の大転換に向けて

おわりに

 注/文献
 〈付録〉統計データの出所と加工の方法

関連情報

●人類の経済活動は、産業革命以降、急速な成長を続けてきた。その結果、地球の有限性が明らかになり、持続可能性の危機が指摘されるようになって久しいが、有効な対策は実現していない。そして今、気候変動が自然災害の激化を伴って顕在化する一方、経済成長を求める力もグローバルな資本主義の下で一層強まっている。
●私たちの未来はどうなるのだろうか? 地球環境の破局は避けられるのだろうか? 経済はこのまま成長を続けられるのだろうか? 環境対策によって経済を成長させる「グリーン成長」という考え方も生まれているが、それは果たして可能なのだろうか?
●経済と環境の関係は、これまでも様々な形で研究され議論されてきたが、私たちは答えを探し続けている。本書はこのテーマに、制度と進化の経済学に基づく独自のアプローチで接近し、理論と実証の両面から分析を行うことによって、新たな認識と展望を求めていく。
●その根底には、経済と環境の関係を、どちらか一方のロジックによって理解するのではなく、互いに影響しあいながら歴史の中で進化していくものとして理解する必要がある、という問題意識がある。
●近年、異常気象は世界的に日常のこととなり、日本でも観測史上例のない高温や豪雨が頻発している。世界の森林や生物の種の減少にも歯止めがかかっていない。地球環境の危機を訴える科学者の警鐘は厳しさを増しており、今日の経済活動が持続可能ではないことは既に明らかだ。私たちの未来はどうなるのかという不安が、行く手に立ちこめる暗雲のように広がってきている。
●一方で、世界の中心的な関心事は、引き続き経済成長である。投資マネーは利潤の機会を求め世界を瞬時に移動している。成長率のわずかな変化と株価の動向に、経済界はもとより政治家や市民もが一喜一憂し、選挙や外交といった政治的なニュースすら、それがマーケットにどう影響するかといった文脈で報じられている。
●二〇〇八年の世界経済危機の後、環境対策によって経済を成長させようという「グリーン成長」や「グリーン・ニューディール」という理念が生まれてきた。各国や国際機関で議論され、経済と環境を両立させる理念として国際的に脚光を浴びてきた。経済が落ち着きを取り戻し、提唱者だったオバマ政権の勢いも弱まる中、後景に退きつつあるようにも見えるが、分断されている経済成長と環境対策の議論を橋渡しする理念として、貴重なヒントを提供してくれている。「グリーン成長」ははたして可能なのだろうか。それはどのようにして、どの程度まで可能なのだろうか。その可能性と限界を理論的に明らかにすることが、本書の一つの焦点となる。
(「はじめに」より)


大熊一寛(おおくま・かずひろ)
1966年東京生まれ.1990年に東京大学教養学部教養学科卒業.同年環境庁入庁以後,環境と経済に関する分野を中心に,幅広い環境政策の立案・調整を担当.並行して研究に取り組み,横浜国立大学国際社会科学研究科(博士課程)修了.博士(経済学).2012年より環境省総合環境政策局環境経済課長を務める.

ページトップへ