アルメニア人の歴史――古代から現代まで

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  • ジョージ・ブルヌティアン
  • 小牧昌平監訳  渡辺大作訳
  • A5上製 528ページ
    ISBN-13: 9784865780574
    刊行日: 2016/01

もう一つの「ディアスポラの民」の三千年史をトータルに描く

作曲家ハチャトリアン、作家サローヤン、歌手アズナヴールら優れた芸術家を輩出してきたアルメニア人。
ゾロアスター、キリスト教、イスラームなどの宗教が交錯するコーカサスの地における、アラブ・スラヴ・ペルシア・トルコ・モンゴルなど諸民族・諸帝国による支配からの 独立に向けた苦闘と、世界に離散した「ディアスポラ」の三千年史を一冊にまとめた、アルメニア史研究の世界的第一人者による決定版の完訳。
●カラー口絵16頁


目次

 日本語版序文
 第六版へのまえがき
 凡例

第Ⅰ部 独立から外国の支配へ――古代から西暦1500年まで
  第Ⅰ部への序文
 1 高原と十字路――アルメニアの大地
 2 アラとセミラミス――アルメニアの最初の王国、ウラルトゥ(前870~前585年)
 3 ノアの箱船から考古学へ――アルメニア人の起源
 4 サトラップから王へ――エルヴァンド家、最初の自治的なアルメニアの統治者たち(前585年頃~前189年頃)
 5 ローマ軍団とパルティア騎兵の間で――アルタシェス朝とアルメニア王国の成立(前189年頃~西暦10年)
 6 アルサケス/アルシャク朝 73
  Ⅰ パルティアの属国、ローマによる戴冠――アルメニアにおけるアルサケス朝(西暦66~252年)
  Ⅱ 十字架とペン――アルシャク朝(アルシャクニ)(217~428年)
 7 拝火教寺院とイコン――ペルシアとビザンツ支配下のアルメニア(428~640年)
 8 啓典の民――アラブ支配下のアルメニア(640年頃~884年)
 9 王権乱立の大地――バグラト朝と中世のアルメニア諸王国(884~1045年)
 10 東西の出会い――キリキア・アルメニア王国(1075年頃~1375年)
 11 多数派から少数派へ――トルコ人、モンゴル人、トルクメン人支配下のアルメニア(1071年頃~1500年)

第Ⅱ部 外国の支配から独立へ
  第Ⅱ部への序文
 12 アミラたちとスルタンたち――オスマン帝国におけるアルメニア人たち(1460年頃~1876年)
 13 ハージェたち、メリクたち、シャーたち――イランのアルメニア人たち(1501~1896年)
 14 ムガル帝国から英領インドへ――南アジアのアルメニア人たち(1550年頃~1858年)
 15 庇護少数派として――アラブ世界とエチオピアのアルメニア人共同体(中世から19世紀まで)
 16 救済の約束――ロシア帝国のアルメニア人たち(1550年頃~1828年)
 17 正教会とカトリックの間で――東西ヨーロッパにおけるアルメニア人の離散(中世末期から19世紀を通して)
 18 アルメニア問題とその最終的解決――オスマン帝国のアルメニア人たち(1876~1918年)
 19 ツァーリの臣民――トランスコーカサスとロシアのアルメニア人たち(1828~1918年)
 20 一千日間――最初のアルメニア共和国(1918~1921年)
 21 ネップからペレストロイカへ――ソヴィエト・アルメニアあるいはアルメニア第二共和国(1921~1991年)
 22 新たなディアスポラ――アルメニア人の全世界的共同体(1900~2011年)
 23 思想的対立から党派政治へ――ディアスポラ政党と諸組織(1921~2011年)
 24 高まる独立の痛み――アルメニア第三共和国(1991~2011年)


 監訳者あとがき
 「アルメニア人の歴史」関連年表(BCE3000年~現代)
 参考・参照文献一覧/地図一覧/口絵出典一覧/人名索引/地名・事項索引


関連情報

地理は多くの国家の歴史を決定づけるものであるが、このことがアルメニアほど如実に示された地域はない。アジアとヨーロッパの間の回廊というアルメニアの他に例を見ない位置は、しばしば侵略者を引きつけ、その結果、アルメニアは長期にわたり他国に支配されることになった。アッシリア人、スキタイ人、ギリシア人、ローマ人、ペルシア人、アラブ人、クルド人、トルコ人、モンゴル人、トルクメン人、ロシア人たちは、皆一様にこの土地とそこに住む人々に影響を及ぼしてきた。一方で、アルメニアの地理的位置は、そこに住む人々が物質的に繁栄し、文化を発展させることも可能にした。実際、アルメニアは古代から商人たちの主要ルートとしての役割を果たしてきた。その代わりにアルメニア人は、(古代や中世において)ヨーロッパがアジアから学ぶ際の、そして、(現代において)アジアがヨーロッパの技術を取り入れる際の通り道の役割を担ったのである。アルメニアの数多くの大小の隣国たちが歴史から消え去ったが、アルメニアやアルメニア人はなんとか生き残ることができた。皮肉にも、他国の侵略を招き、その一方で、自治的諸公の自立を可能にした同じ光景は、アルメニア人がアイデンティティを維持できた一因にもなったのである。なぜなら、アルメニアをたくさんの谷間に分断している無数の山々が、歴史の大部分において、強力な中央集権的指導者のもとで統一国家が樹立されることを妨げたわけだが、この事実こそが姿を変えた天の恵みだったのである。
(本書より)


■著者
●ジョージ・ブルヌティアン(George A. Bournoutian)
1943年イラン生まれのアルメニア人、アメリカ在住(アメリカ国籍)。歴史家。アイオナ大学教授。UCLAにて博士号取得(歴史学、1976年)。アルメニア、イラン研究の第一人者。英語・アルメニア語・ペルシア語・ロシア語・ダリー語・タージーク語を操り、ポーランド語・フランス語・オスマン語は読解可能。
著書に、Eastern Armenia in the Last Decades of Persian Rule, 1807-1827(UCLA, 1982),The Khanate of Erevan under Qajar Rule, The 1795-1828(Mazda Publishers, 1992),From Tabriz to St. Petersburg: Iran's Mission of Apology to Russian in 1829(Mazda Publishers, 2014)など、アルメニア・周辺地域の歴史書が多数。また、アルメニア初の史学書であるタブリーズのアラケルによる『史書』、エレヴァンのアブラハムによる『諸戦争の歴史』、クレタのアブラハムによる『年代記』(いずれも17世紀)など、アルメニアの重要な史書・史料の英訳・解説も手がける。
本書は、既にスペイン語・トルコ語・アルメニア語・アラビア語・ロシア語に訳されている。


■監訳者・訳者
●小牧昌平(こまき・しょうへい)
1953年鹿児島県生。上智大学総合グローバル学部教授。専攻:イラン・アフガニスタン近代史。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。主要著作に「ヘラートのヤール・モハンマド・ハーン」(『東洋史研究』65-1, 2006)『世界史史料8帝国主義と各地の抵抗1』(項目執筆、岩波書店、2009)など多数。

●渡辺大作(わたなべ・だいさく)
1981年千葉県生。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程在籍。専攻:アルメニア近現代史。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修士課程修了。

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