熊沢蕃山と後藤新平――二人をつなぐ思想

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  • 鈴木一策 著
  • 楠木賢道 監修
  • 四六上製 360頁
    ISBN-13: 9784865784022
    刊行日: 2023/10

山川は天下の源なり――熊沢蕃山

国の根本は民で、民の根本は食である。 民や食のことを知らずに、国を治めることはできない。……国を統治するのは大事なことだが、「窮理の学」を知らずに、それをなすことはできない。(熊沢蕃山『集義和書』より)
後藤新平の「衛生の道」の知られざる思想的水源を辿る、鈴木一策、未完の遺著。


目次

はじめに
序章 蕃山とは何者か
第一章 蕃山の天・地・人一貫の実学思想
第二章 青年、後藤新平と「衛生の道」
第三章 後藤新平「日本新王道論」への道
第四章 後藤新平の「日本新王道論」とは何か

〈特別付録〉後藤新平の「日本新王道論」(1905年)現代語訳
監修者解説(楠木賢道)
熊沢蕃山詳細年譜(鈴木一策)
後藤新平略年譜
人名索引

関連情報

『集義和書』は、熊沢蕃山先生の一代の経済を書いたもので、陽明の倫理説と、蕃山先生一派の経済観とを合したものである。此書は吾輩に、大なる経済観道徳観を与えて居る。世の中に単純なる経済学説を書いた書も、倫理書も、甚だ少くない。併しながら之を結んで、直に活世界に応用の出来るように説き立てた書は、我輩はまだ余り多く見た事がない。要するに経済も道徳も、各別に孤立しては何の役にも立たぬ。道徳を行う上に経済が必要となる。経済の目的を達する上にも道徳が必要であるから、此二者を区別して考えることは学説としては暫く置き、実際家の考えられぬことであると思う。故に我輩は、此点に於て『集義和書』に依って、道徳的経済を実行するの知識をば、蕃山先生から享けて居るのである。
(後藤新平「読書と活社会」より)


後藤新平研究会では、この20年余、後藤新平の様々な著作を読み、報告や討論を行ってきたが、ある時、「読書と活社会」(後藤新平述/立石駒吉編『後藤新平論集』伊藤元治郎刊、1911年所収)という短い文章が目に留まった。それは、後藤新平が生涯の愛読書3冊について語ったものである。

そこで後藤が挙げている本の1つは、サミュエル・スマイルズのSelf-Help を旧幕臣の中村正直が翻訳出版し一大ベストセラーとなった『西国立志編』であり、今1つは吉田兼好の随筆『徒然草』である。この2冊は、当時の多くの読者にも読まれているのではないかと思われたが、残る1冊は、江戸時代初頭の儒者熊沢蕃山(1619-91)の『集義和書』(1672年)である。

この(「読書と活社会」)後藤新平の言を、そのまま受け取れば、蕃山の『集義和書』という書物は、王陽明の倫理に、蕃山独特の経済観を加えたものであり、それを統合して現実世界に応用できるように説いた書ということができる。その道徳的経済主義は、例えば、渋沢栄一の『論語と算盤』をも思い起こさせるものだ。その渋沢の著書を繙くと、「理論と現実を密接せしめた」数少ない学者の1人として、熊沢蕃山の名も挙げられている。

そこで、当時の後藤新平研究会のメンバーの1人であった故鈴木一策が中心になって、蕃山の『集義和書』を読む「蕃山プロジェクト」が開かれた。その成果が、『後藤新平の会会報』に連載され、本書の原型となった「熊沢蕃山と後藤新平」である。
(「はじめに」より)


著者紹介

●鈴木一策(すずき・いっさく)
1946年、宮城県仙台市に生まれる。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。哲学、宗教思想専攻。國學院大學、神奈川大学、埼玉大学、中央大学等で非常勤講師を務める。2021年4月18日没。享年74。
著書に、『マルクスとハムレット――新しく『資本論』を読む』(2014年)『ヨモギ文化をめぐる旅――シェィクスピアと石牟礼道子をつなぐ』(2023年、以上藤原書店)。編書に、後藤新平『国難来』(現代語訳・解説、2019年、藤原書店)。訳書に、ピエール・マシュレ『ヘーゲルかスピノザか』(1986年、新評論)、スラヴォイ・ジジェク『為すところを知らざればなり』(1996年、みすず書房)など多数。

【監修】
●楠木賢道(くすのき・よしみち)
1961年、大分県中津市に生まれる。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科満期退学、博士(文学)。筑波大学教授を経て、現在中央民族大学特聘教授、公益財団法人・東洋文庫研究員。東洋史専攻。2013年から後藤新平研究会に参加。
著書に『清初対モンゴル政策史の研究』(汲古書院、2009年)、『森繁久彌・精神史の源流――幕末・明治から昭和戦前まで』(藤原書店、2022年)。編書に後藤新平『国家とは何か』(現代語訳・解説、藤原書店、2021年)等がある。

*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです

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