新しい野間宏――戦後文学の旗手が問うたもの

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  • 尾西康充 著
  • 四六上製 384頁
    ISBN-13: 9784865784060
    刊行日: 2023/11

1970年代の“生命科学”の誕生から、現在直面する“生命の危機”の時代を見通した野間宏の全体小説とは何か!?

『暗い絵』で戦後文学の鮮烈な出発を宣言、『真空地帯』で戦争・軍隊の異様を描き、人間の社会と生理の全体を捉える全体小説『青年の環』で人間の悪の極限まで描き尽くした野間宏(1915-91)。その後未完『生々死々』を亡くなるまで書き続けた野間宏は、何を描き出そうとしたのか?


目次

はじめに――人間の危機への問題意識
第1章 「暗い絵」論(1)――「暗い穴」の意味
第2章 「暗い絵」論(2)――《第三の途》と戦中日記にみる無意識の罪責感
第3章 人民戦線運動と《近代主義批判》――日本とドイツの戦後文学の視点から
第4章 「顔の中の赤い月」論――復員兵の苦悩
第5章 「崩解感覚」論――梯明秀と「虚無の自覚」
第6章 「真空地帯」論――「大衆と共感し、共応し合う世界」の造形
第7章 「地の翼」論――1950年代の政治と文学
第8章 地域人民闘争――雑誌「人民文学」と1950年代
第9章 『青年の環』論(1)――融和運動における「イデオロギー的機能」
第10章 『青年の環』論(2)――大道出泉における革命主体の形成
第11章 野間宏における1960年代の政治と文学
第12章 「わが塔はそこに立つ」論――「親鸞とマルクスの交点」
第13章 「生々死々」論――未完の全体小説
おわりに
注/主要参考文献一覧/初出一覧/野間宏略年譜/人名索引

関連情報

 戦後の日本社会に警鐘を鳴らしてきた野間宏(1915-91)は、1986年4月26日に発生したチェルノブイリ原子力発電所での大事故を目の当たりにして、現代を「病める地球の時代」と定義し、現代の文明が深刻な危機に瀕しているとした。
 野間はこのような状況を、親鸞が生きていた鎌倉時代前期の“末法の時代”になぞらえた。しかし、野間の指摘から30年以上経っても、これらの問題は解決されるどころか、むしろ混迷を深めている。
 野間の文学を貫くものは、現実社会に対峙する自己の主体を確立し、抵抗活動を実践する試みであったといえる。野間の場合、それを文学作品の創作において具体化させたのが「全体小説」の構想であった。(「はじめに」より)

著者紹介

●尾西康充(おにし・やすみつ)
1967年兵庫県神戸市生まれ。三重大学人文学部教授。日本近代文学専攻。広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了。博士(学術)号取得。
主な著書として『北村透谷論――近代ナショナリズムの潮流の中で』(明治書院)、『田村泰次郎の戦争文学――中国山西省での従軍体験から』(笠間書院)、『『或る女』とアメリカ体験――有島武郎の理想と叛逆』(岩波書店)、『小林多喜二の思想と文学――貧困・格差・ファシズムの時代に生きて』(大月書店)、『戦争を描くリアリズム――石川達三・丹羽文雄・田村泰次郎を中心に』(大月書店)、『沖縄 記憶と告発の文学――目取真俊の描く支配と暴力』(大月書店)他。

*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです

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