エジプト人モーセ――ある記憶痕跡の解読

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  • ヤン・アスマン
  • 安川晴基 訳
  • A5上製 432ページ
    ISBN-13: 9784865781045
    刊行日: 2016/12
  • 西洋の人文学に“記憶論的転回”をもたらした、大論争の書! “事実史”から“記憶史”へ!

    “ヘブライ人モーセ”は、唯一の真なる神を崇め、他の神々を偽として排撃する、新たな一神教を告げ知らせた。この聖書の伝承に対し、モーセを“エジプト人”とする――邪とされたエジプトに、ある真理の故郷を求める――試みが、西洋の精神史にはあった。
    古代エジプトの王アクエンアテンから、スペンサー、カドワース、ウォーバートン、ラインホルト、シラー、そしてフロイトへ、“エジプト人モーセ”の想起の系譜を掘り起こす。

    目次


     序言

    第1章 記憶史とエジプト像

    第2章 隠蔽された歴史、抑圧された思い出――モーセとアクエンアテン

    第3章 律法の意味と起源――エジプト学者としてのジョン・スペンサー

    第4章 真理と神秘――ウィリアム・ウォーバートン

    第5章 名なき者と全一者

    第6章 ジークムント・フロイト――抑圧されたものの回帰

    第7章 モーセの区別の象徴と変容

     原注/訳者解説/人名索引

    関連情報

     一神教誕生の神話に描かれる根源的な行為、すなわち、真の宗教と偽の宗教を分かつ行為を、ヤン・アスマンは「モーセの区別」と名づける。アスマンによれば、一神教の目印は、神の単一性か多数性かではない。そうではなく、一神教に内在する排他性にある。己が体現する絶対的な真理への固執と、他者の否定だ。それゆえヤン・アスマンは、一神教を「対抗宗教」とも呼ぶ。なぜならそれは、自己に先行するものや外部にあるものを「虚偽」として排除する、否定の潜勢力を内に含んでいるからだ。
     聖書で想起される「ヘブライ人モーセ」は、このモーセの区別を象徴している。この区別は、この根源的なエクソドスの神話では、「イスラエル=真理」対「エジプト=虚偽」という敵対の布置となって現れる。
     他方で、この「ヘブライ人モーセ」に対して、モーセをエジプト人とする、それゆえにモーセの告げ知らす真理の起源をエジプトに求める試みが、繰り返しなされてきた。「エジプト人モーセ」を想起することは、「イスラエル=真理」と「エジプト=虚偽」の対立の布陣を脱構築し、モーセの区別を克服することを意味する。
    (「訳者解説」より)

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