竹下しづの女――理性と母性の俳人 1887-1951

価格: ¥3,960 (税込)
[ポイント還元 158ポイント~]
数量:
在庫: 在庫あり

返品についての詳細はこちら

twitter

  • 坂本 宮尾
  • 四六上製 400ページ
    ISBN-13: 9784865781731
    刊行日: 2018/06

初の本格的評伝!!

「短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎(すてつちまをか)」――漢文、西洋文学の教養を具えた理性の人であり、五人の子ども、若い俳人たちを育てた母性の人でもあった俳人、竹下しづの女(たけした・しづのじょ)。
その独立独行の生涯を丹念にたどり、難解で知られる俳句を丁寧に鑑賞する。しづの女は職業婦人の先駆けであり、戦争中に早世した長男竹下龍骨や金子兜太、瀬田貞二らを輩出した「成層圏」誌の指導者でもあった。



目次


 はじめに

第Ⅰ部 女性俳句の先駆者として――明治20~昭和12年
第1章 大農家の跡取り娘
〈緑蔭や矢を獲ては鳴る白き的〉

第2章 俳壇デビュー
〈警報燈魔の眼にも似て野分かな〉

第3章 「ホトトギス」と「天の川」の初巻頭
〈短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎〉

第4章 作句の中断と復帰
〈乱れたる我れの心や杜若〉

第5章 葦原のなかの新居
〈ちひさなる花雄々しけれ矢筈草〉

第6章 生活の激変
〈ことごとく夫の遺筆や種子袋〉

第Ⅱ部 俳句指導者として――昭和12年~26年
第7章 「成層圏」の時代
〈たゞならぬ世に待たれ居て卒業す〉

第8章 「成層圏」時代のしづの女の活動
〈女人高邁芝青きゆゑ蟹は紅く〉

第9章 戦中の竹下龍骨
〈梅白しかつしかつしと誰か咳く〉

第10章 戦後の生活
〈天に牽牛地に女居て糧を負ふ〉

 おわりに/あとがき/竹下しづの女略年譜/書誌/引用句索引/人名索引


関連情報

「女人高邁芝青きゆゑ蟹は紅く(しづの女)
 それまでの女流俳句の通念を見事に打ち破った勁利な美質に、私はおどろき、たちどころにしづの女俳句のファンになったものだ。」
(金子兜太)


 竹下しづの女は福岡が生んだあっぱれな女流俳人である。平塚らいてう(1886―1971)とほぼ同時代を生きたしづの女は、封建的な家父長制から、個を主張する民主主義へと移る「過渡期」を懸命に生きる女性の内面を俳句で表現した。
 しづの女といえば真っ先に思い浮かぶのは〈短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎【すてつちまをか】〉という句である。寝苦しい夏の夜にお乳を求めてむずかる子を、エッ、ウルサイ、捨てちまおうか、と威勢よく詠んだもの。下五の漢文表現は捨てようか、いや捨てられはしないという反語である。だがそれにしても内容も、表現も衝撃的である。当時の俳壇では、黒船が来た、と驚きをもって迎えられたという。(…)
 広い社会的な視野、旺盛な批判精神という点で、しづの女は当時の女性の俳人のなかでも突出した存在である。日本の詩は抒情ばかりで理性がないことを嘆いた彼女は、俳句に理性を持たせることを使命とし、社会への関心や実生活に根ざした日々の思いを表現した。
(本文より)


ページトップへ