声の文化と文字の文化〈普及版〉

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  • ウォルター・J・オング 著
  • 桜井直文・林正寛・糟谷啓介 訳
  • 普及版へのあとがき=桜井直文
  • 四六並製 416頁
    ISBN-13: 9784865784626
    刊行日: 2025/5

言語、思想、文学、音楽、人類学、メディア論など多領域で読まれる古典的名著、待望の普及版!

「書く技術」の登場は、人間の思考と社会構造をどのように変化させたのか。
文字言語以前の社会における記憶・思考の形式や生活文化の特性をつぶさに描き、「文字文化」そして「印刷文化」における言語のあり方を捉え返す。
SNSが日常化し、生成AIが爆発的に拡大する今、必読の一冊。


目次

日本語版への序文
序文

第一章 声としてのことば

第二章 近代における一次的な声の文化の発見

第三章 声の文化の心理的力学

第四章 書くことは意識の構造を変える

第五章 印刷、空間、閉じられたテクスト

第六章 声の文化に特有な記憶、話のすじ、登場人物の性格

第七章 いくつかの定理〔応用〕

訳者あとがき(初版)
文字の文化以前以後――普及版へのあとがきにかえて
事項・固有名・書名索引
参考文献

関連情報

■「書く」ことが発明されて、ひとびとの意識がひとつの段階からべつの段階へとうつりかわったこと、いいかえれば、第一次的な声の文化から文字の文化へと変貌したこと は、思考過程、人間の性格、そして社会構造のうえに深い変化をもたらした。本書は、オラリティー(声の文化)とリテラシー(文字の文化)のちがいについて探究する。

■声の文化においても、思考と表現は高度に組織化されていることが多い。しかし、文字に慣れた精神にとっては、そうした思考や表現の組織化は、しばしば理解しがたいほど異質なものである。そのような組織化は、格言その他のあるまとまりをもった表現というしかたで構造化されている。

■リテラシーが意識を変化させ、ある思考パターンを生みだすということは、いまや明らかである。しかし、そうした思考パターンは、精神が、「書く」という技術を身につけて、それを内面化し、自分自身のものにしたときにはじめて、可能となるのである。

■「書く」ことと、印刷およびエレクトロニクスの技術が、ひとびとの精神、文学、社会のうえにどのように影響を及ぼすか。本書は、文学と思考のなかにごく最近まで重く沈澱していた声の名残りをあとづけ、知的興奮をさそう新しい発見をとりあげる。その発見は、ホメロスの詩や現代のアフリカの叙事詩、およびその他の世界中の口承文芸に関するわれわれの理解を書き改め、哲学的、科学的な抽象思考の発生に関する新しい洞察を与えてくれる。
〈「一次的な声の文化」、つまり、書くことの知識をまったくもたない声の文化から、文字の文化〔リテラシー〕への移行は、人間の生活のなかで生じた非常に大きな変化です。それが、人類全体の歴史のなかで生じたもっとも重要な移行の一つであることはまちがいありません。
 書くことは、思考のかたちを変え、また、ほんの六千年ほどまえに最初の書かれたものが出現して以来、社会の過程や構造にかぎりない影響をあたえてきました。もちろん、声の文化から文字の文化への移行が、人間の文化のすべての変化を説明するわけではありません。しかし、この移行は、過去何世紀ものあいだの非常に多くの変化に関係し、また、そうした変化に影響をあたえてきました。しかも、書くことから印刷が生まれ、さらにそこから、現在の電子的なコミュニケーションが生まれてくるのです。〉

(「日本語版への序文」より)

著者紹介

●ウォルター・J・オング(Walter J. Ong)
1912年、アメリカ・カンザスシティ生まれ。イエズス会士となった後、セントルイス大学、ハーバード大学で、哲学、神学、英語学を学ぶ。セントルイス大学で長く教鞭をとり、最後は同大学名誉教授。専攻は古典学・英語学。とくに、ベーコンやデカルトに影響を与えたペトルス・ラムスの研究の第一人者として知られ、その研究はマクルーハンにも多大な影響を与えた。ことばとそのメディアとの関係、またその関係が人びとの考えと社会におよぼす影響に関心が深く、本書はその集大成ともいえる。2003年没。
他の邦訳に『生への闘争――闘争本能・性・意識』(高柳俊一・橋爪由美子訳、法政大学出版局、1992)がある。

【訳者紹介】
●桜井直文(さくらい・なおふみ)
1948年宮城県に生まれる。一橋大学大学院社会学研究科博士課程退学。哲学・社会学。元明治大学法学部教授。
編著に『スピノザと政治的なもの』(共編、平凡社)、訳書に『ミシェル・フーコー〔真理の歴史〕』(新評論)、I.イリイチ『生きる思想』(藤原書店)、D.エヴァンス『ラカンは間違っている』(学樹書院)、M.スチュアート『宮廷人と異端者――ライプニッツとスピノザ、そして近代における神』(共訳、書肆心水)他。

●林正寛(はやし・まさひろ)
1950年愛知県に生まれる。一橋大学大学院社会学研究科博士課程退学。言語学・社会言語学。元女子美術大学芸術学部教授。
著書に『多言語主義とは何か』(共著、藤原書店)、訳書にL.‐J.カルヴェ『超民族語』(白水社・文庫クセジュ)他。

●糟谷啓介(かすや・けいすけ)
1955年東京都に生まれる。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。社会言語学・言語思想史。一橋大学名誉教授。
編著に『言語帝国主義とは何か』(共編、藤原書店)、『言語・国家、そして権力――ライブラリ相関社会科学4』(共編、新世社)、訳書にCl.アジェージュ『絶滅していく言語を救うために』、同『共通語の世界史』(以上、白水社)、U.ペルクゼン『プラスチック・ワード』(藤原書店)、R.ショダンソン『クレオール語』(共訳、白水社)他。

*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです

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