- 菊大判 332ページ
ISBN-13: 9784894346871
刊行日: 2009/5
新しい時代に向けてトータルな知の総合を企図する学芸総合誌
今、「民主主義」なる亡霊が世界を徘徊している。
「民主主義」という言葉を出すと、誰もがその内実を問うことなく、是とする、否しなければならない空気になる。それほど、現代を生きる我われ一人ひとりに、「民主主義」なる言葉は自明の言葉として植えつけられてきたのではないだろうか。
大正期に「デモクラシー」は、「民本主義」とか「民主主義」と翻訳され、「大正デモクラシーの時代」と今日の我われに伝えられている。現在の我われにとって最も大きな意味をもつのは、「戦後民主主義」という言葉だろう。初の敗戦を経験したのだが、長いつらい戦争の時間を経て、日本の民衆は敗戦よりも解放を味わったのではないか。GHQ占領下の時代から、半強制的に「民主主義」を押しつけられ喜んで受容してきた我ら日本人。その上、連合国の中でアメリカとの単独講和を結ぶことになる。その後は、誰もが「民主主義」の有難さに酔い痴れ、“多数決の原理”が「民主主義」の法則として適用され、物事を決めるあらゆる所で“民主的に“ということになっていった。今日の、誰も責任を問われない時代の誕生および形成である。
そもそも民主主義とは何か。民主主義は日本の中でこれまでまったく存在しなかったのか。また、考えてきた人間も居なかったのか。古来共同体の社会にあった「もやい」や「ゆい」などのその地域に住む人びとの相互扶助の集団であり生活は、民主主義とつながらないのか。また、百年先の社会や世界のありようを見通し壮大なヴィジョンを創った政治家である後藤新平が、晩年に説き起こした「自治生活」運動と民主主義はどうつながるのか、今特集の中で是非とも考えてゆきたい。
それぞれの地域や国の風土の中で育てられてきた文化や伝統を“力の論理”で画一化してゆく時代は終った今、「民主主義」なる言葉を本特集で改めて問い直してみたいと思う。
目次
【特集】 「民主主義」 とは何か
〈鼎談〉 民主主義のための民主主義批判
粕谷一希+新保祐司+中本義彦
【 「民主主義とは、 万人のための貴族主義でなければならない」 】
〈小特集〉 世界史の中の 『黒い十字架』
● 連続座談 「自治」 とは何か Part4 自治と世間体
養老孟司+塩川正十郎+片山善博
● チャベス→ガレアーノ→オバマ
飯島みどり
【 『収奪された大地』 というメッセージ】
● 特別対談 「故郷」 をめぐって
オルハン・パムク (ノーベル賞作家)
+サルマン・ラシュディ (ブッカー賞作家)
(実川元子訳)
●横井小楠生誕200周年記念講演
実学の系譜 【中江藤樹・熊沢蕃山・横井小楠】
源 了圓
● 連 載
● 〈書物の時空〉
読者の声 / 執筆者紹介