〔学芸総合誌・季刊〕環――歴史・環境・文明 vol.38 [特集]「プラスチック・ワード」とは何か

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    • 菊大判 360ページ
      ISBN-13: 9784894346987
      刊行日: 2009/7

    新しい時代に向けてトータルな知の総合を企図する学芸総合誌


     現在、われわれの日常生活は、大量のことばによって取り囲まれている。テレビ、新聞といったメディア、政治家や行政当局の文書、空前の量で発行される雑誌や書物、そして今や日常において不可欠になったかに見えるインターネットは、おそるべき量のことばによって埋めつくされている。
     そのなかには、あからさまな力をふるって人びとを動かそうとするプロパガンダのことばも多いが、それ以上に、静かに、意識されないかたちで我々の思考のあり方や認識の枠組みを大きく方向付けることばが存在する。そのような、権威をまとってはいるが内容は空虚で、だからこそブロックのように安易に組み合わされて、いつの間にか我々の認識や行動を方向付けていることば――「発展/開発」「コミュニケーション」「インフォメーション」「ニーズ」「システム」等々、イリイチの言う「粘土のような可塑的な」ことば――を、晩年イリイチと親交の深かった言語学者ウヴェ・ペルクゼンは、“プラスチック・ワード”と名付けた。
     本特集では、この“プラスチック・ワード”という概念を糸口に、われわれの知を誘導し、認識を方向付けている数々のことばを批判的に検証してみたい。他者との出会い、他者との関係の構築によって、新しい何かが創出される現場を取り戻す手がかりを、“プラスチック・ワード”を検証することからはじめたいと思う。

    目次

    【特集】  「プラスチック・ワード」 とは何か

    プラスチック・ワードとは何か
    ウヴェ・ペルクゼン (訳=糟谷啓介)
    プラスチック・ワードの 「発見」
    ウヴェ・ペルクゼン (訳=安川晴基)
    【メキシコでのイリイチとの対話 ―― 『多形態 メキシコ日記』 抄】
     
    生命 ―― 最悪のプラスチック・ワード
    イバン・イリイチ
     
    (聞き手=デイヴィッド・ケイリー / 訳=高島和哉)


    〈日常に侵入するプラスチック・ワード〉

    遺伝子 ―― 話しことばに潜む “遺伝子” の象徴的パワー
    シルヤ・ザメルスキー (訳=和田知代)
    効用 ―― 「効用」 は有用ではない
    サジェイ・サミュエル (訳=高島和哉)
    改革 ―― 大学のハビトゥス
    石井洋二郎
    プロジェクト ―― 未来を 〈待つ〉 ために
    宇野重規
    責任 ―― 責任概念と近代個人主義
    小坂井敏晶
    生命 ―― 「いのち」 の定義
    竹内敏晴
    所有 ―― 市場信仰の根源を問い直す
    立岩真也
    ストレス ―― 引き受けることの喪失
    三砂ちづる
    支援 ―― 「支援」 と 「福祉」 の制度化
    芹沢俊介
    リスク ―― 金融危機の底流にあるもの
    三神万里子


    〈 『プラスチック・ワード』 を読む〉

    「人間の生きる条件」 についての哲学
    北川東子
    言語による独裁制と植民地化
    西川長夫
    プラスチック・インテリの跳梁跋扈
    新保祐司
    「プラスチック・ワード」 と国民国家
    山本哲郎
    プラスチック・ワードと世界の自動記述
    塚原史
    道具そのものからの発想 【プラスチック・ワードから離れて】
    柏木博
    王様は裸だ!
    太田阿利佐


    〈来日特別対談〉 『1984年』 から 「プラスチック・ワード」 へ
    ウヴェ・ペルクゼン+糟谷啓介
    【グローバリゼーションに抗する言語批判】
    (通訳・訳=木村護郎クリストフ)

    ドイツ語圏言語批判の系譜とカール・クラウス
    安川晴基
    図像の世界市場 (抄)
    ウヴェ・ペルクゼン (訳=眞鍋正紀)



    【小特集】 「森崎和江」 を読む

    ● なぜ、 今、 森崎和江か

    精神史の旅 【明日へと生きる】
    森崎和江
    森崎和江の世界
    鈴木英生
    原母への旅立ち 【出会いの頃】
    河野信子
    母なるひとに
    斎明寺以玖子
    森崎和江と詩
    高橋順子
    ことばの地平
    うりうひさこ
    詩人・森崎和江
    坂口博
    玄界灘を仰ぎ見て
    朴才暎
    森崎和江 【愛される強さ】
    三砂ちづる
    炭鉱の主婦と女坑夫
    水溜真由美
    記憶の目覚め 【植民地朝鮮を語る人びととの出会いを通じて】
    松井理恵
    背中を洗い流す言葉
    茶園梨加



    ● シベリア出兵は後藤新平の失敗か?
    ワシーリー・モロジャコフ


    ● 鶴見和子さん歿後三年 『鶴見和子 山姥を生きる 【晩期三歌集読解】』
    中路正恒


    ● 来日特別対談 ケインズ主義からケインズへ
    ジル・ドスタレール (通訳・訳=中野佳裕)
    【 『ケインズの闘い』 をめぐって】
    松原隆一郎


    ● 寄 稿
      第5回 「ゆいまーる・琉球の自治」 (於・沖永良部島) 報告

    琉球史を世界史の中で捉える
    松島泰勝
    望郷・ふるさと志向・愛国心
    王敏
    いま歴史を語るということ 【F・アルトーグ 『「歴史」 の体制』】 をめぐって
    伊藤綾



    ● 連 載

    ■ 金時鐘の詩 「失くした季節」
     
    ■ 石牟礼道子の句 「水村紀行」
     
    ■ 古文書から見た榎本武揚 ―― 思想と信条 2 「戊辰の嵐に、立つ」
    合田一道
    ■ 近代日本のアジア外交の軌跡 6 「中国・朝鮮の民衆運動と日本外交」
    小倉和夫
    ■ 水の都市論 ―― 大阪からの思考 7 「災い」
    橋爪紳也
    ■ 伝承学素描 14 「古代丹波からの布石」
    能澤壽彦



    ● 〈書物の時空〉

    ■ 新連載
     
     明治メディア史散策 第1回「再考すべき人々」
    粕谷一希

    ■ 名著探訪
     
     『挑戦する勇気』 (羽生善治 著)
    大沢文夫
     『音楽と音楽家』 (シューマン 著・吉田秀和 訳)
    高橋英夫
     『弁証法的理性批判』 (サルトル 著)
    安丸良夫

    ■ 書 評
     
     『輿論と世論』 (佐藤卓己 著)
    村井良太
     『救済の星』 (ローゼンツヴァイク 著)
    早尾貴紀


    読者の声 / 執筆者紹介

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