『苦海浄土』論――同態復讐法の彼方

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  • 臼井隆一郎
  • 四六上製 288ページ
    ISBN-13: 9784894349308
    刊行日: 2014/08
  • わたしには、水俣病闘争が人類の存亡を賭けた母権闘争と見えてきた。

    「目には目を」という同態復讐法は、やられたらやり返せというのではない。
    同態の害を加えることによって、加えられた苦痛が癒されるわけでもない。
    石牟礼道子『苦海浄土』の「宗教以前の世界」をバッハオーフェンの先史母権社会と結びつけ、同態復讐法を超えた境地を見出す。

    目次


    はじめに

    第一章 復讐の女神
     1 母権制の同態復讐法とは何か
     2 『母権論』と『資本論』
     3 ミュンヒェン宇宙論派
     4 母権社会における復讐の根源
     5 オレステイア
     6 母権と血の権利
     7 不知火海と地中海
     8 復讐の女神としての石牟礼道子

    第二章 妣たちの国
     1 原母の方向へ
     2 ゲーテの『ファウスト』にみる妣たちの国
     3 イシスの神秘
     4 クロイツァーの神秘的象徴論
     5 象徴とアレゴリーの連関
     6 母権の原初段階「沼沢地生殖」の時代

    第三章 樹男のまなざし
     1 石牟礼道子の幼年期
     2 石牟礼道子と高群逸枝との出会い
     3 ボッシュの『悦楽の園』
     4 ボッシュとキリスト教異端の思想
     5 母権受容
     6 水俣のジャンヌ・ダルクへ
     7 水俣への愛憎共存
     8 スーソーの詩
     9 樹男と高群逸枝のまなざし
     10 石牟礼道子と高群逸枝はともに幻視する詩人
     11 母系の森の産室で

    第四章 血権
     1 水俣病闘争と『出エジプト記』のアナロジー
     2 異教としての地縁・血縁社会
     3 母権論的人類史
     4 アフリカに母権論の実証
     5 水俣血権闘争
     6 死民と市民権
     7 現代アラブ世界に生きる同態復讐法
     8 リューリングの西欧キリスト教批判
     9 親の仇討ちと緒方正人
     10 救済魂の救済
     11 水俣病と錬金術

    第五章 神秘のヴェール
     1 八つ裂きにされる神々
     2 オルフェウスの八つ裂き死
     3 金属の死と再生
     4 「万物の創造主」イシス
     5 イシスの神秘のヴェール
     6 太母神イシスは運命を編む
     7 イシス神殿の紡績工場
     8 『苦海浄土』は死者を包む神秘のヴェール

    第六章 ネメシスの言語態
     1 丸の内の「復讐の女神」
     2 浜元フミヨさんの声
     3 水俣病闘争の狂気
     4 坂上ゆきとの出会い
     5 ゆき女の声
     6 転身を可能にする水俣のアニミズム
     7 ゆき女と道子の道・ゆき
     8 て、ん、のう、へい、か、ばんざい
     9 地を這う虫たちの闘争
     10 同態復讐法の彼方とは

    第七章 竜神の子
     1 野口遵を生んだ日本の風土
     2 日本窒素株式会社の成立
     3 不知火海は巨か泉水
     4 「象徴」の語源
     5 竜の親族
     6 復讐の女神が慈みの女神になるには
     7 水俣の地母神・杉本栄子
     8 石牟礼道子の遠のエロス
     9 海と天が結ばれる場所
     10 狂女の血統
     11 甦る天草の記憶
     12 竜神の子


     謝辞
     注

    関連情報

    初期人類が定住生活を始めたのは川と海の交わる岸辺であったに違いないと考えれば、水俣という場所はそもそも人類定住の持続性を占う場所にも見えてくる。わたしには、水俣病闘争が人類史の発端ないし終局に位置する人類という部族の存亡を賭けた母権闘争(血権闘争)と見えてきた。わたしは、水俣病という世界史的な事件が産み落とした『苦海浄土』という世界史的名作を讃えるために、自分の知る先史母権制を語る語彙を集められるだけ集めた。自分の持つすべての材料を総動員して、石牟礼道子にオマージュを捧げたかったのである。
    (「はじめに」より)


    臼井隆一郎(うすい・りゅういちろう)
    1946年福島県生。東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。新潟大学教養部助教授を経て,東京大学大学院総合文化研究科教授。現在,東京大学名誉教授。専門,文化学,ヨーロッパ文化論,言語情報文化論。
    著書に『コーヒーが廻り世界史が廻る――近代市民社会の黒い血液』(中公新書,1992)『パンとワインを巡り神話が巡る――古代地中海文化の血と肉』(中公新書,1995)『乾いた樹の言の葉 ――『シュレーバー回想録』の言語態』(鳥影社,1998)『榎本武揚から世界史が見える』(PHP新書,2005)『バッハオーフェン論集成』(編著,世界書院,1992)等。翻訳にデヴィッド・ケイリー『生きる希望 イバン・イリイチの遺言』(藤原書店,2006年)等。他にバッハオーフェン及び母権論思想に関するドイツ語論文多数。

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