叢書『アナール 1929-2010』――歴史の対象と方法(全5巻) 3 1958-1968

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  • エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリ+アンドレ・ビュルギエール監修
  • アンドレ・ビュルギエール編 浜名優美監訳
  • A5上製 528ページ
    ISBN-13: 9784894349490
    刊行日: 2013/12

アナール派最高権威が年代別に重要論文を精選! ブローデルの時代。

「長期持続」(ブローデル)、「オートメーション」(フリードマン)、「歴史と気候」(ル=ロワ=ラデュリ)、「歴史学と社会科学」(ロストウ)、「中世における教会の時間と商人の時間」(ル=ゴフ)、「イングランドの農村蜂起」(ホブズボーム)など、『アナール』の領野を拡げた名論文の数々。



目次

 第III巻序文――ブローデルの時代 1958―1968年
 アンドレ・ビュルギエール(中村督訳)

第1章 長期持続(1958年)
フェルナン・ブローデル(山上浩嗣+浜名優美訳)
歴史学とさまざまな持続/短期の時間をめぐる論争/コミュニケーションと社会数理/歴史家の時間、社会学者の時間

第2章 オートメーション――いくつかの心理・社会学的局面と効果(1958年)
ジョルジュ・フリードマン(池田祥英訳)
仕事の内容、能力と資格の程度、関心度/集団の構造と労働関係/モチベーションと刺激

第3章 アステカおよび古代エジプトにおける記数法の比較研究(1958年)
ジュヌヴィエーヴ・ギテル(茨木博史訳)
記数法の三つの型/20を底とするアステカ、10を底とする古代エジプト/ヒエログリフの表記/数の表記の抽象化/ハイブリッド型

第4章 歴史と気候(1959年)
エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリ(尾玉剛士訳)
寒冷化/年輪気候学/生物季節学/気候の大陸化

第5章 歴史学と社会科学――長期持続(1959年)
ウォルト・W・ロストウ(尾玉剛士訳)
社会科学の歴史とダイナミクス/変化に敵対する理論とモデル/問題の統一――学際的研究の教訓

第6章 中世における教会の時間と商人の時間(1960年)
ジャック・ル=ゴフ(石川学訳)
神にのみ属する時間を商人は売ってよいのか/時間と歴史の問題を根本から刷新したキリスト教/商人の時間/教会の時間/商人の時間が聖書の時間から自由になる

第7章 トリマルキオンの生涯(1961年)
ポール・ヴェーヌ(渡名喜庸哲訳)
奴隷から解放奴隷へ/独立した解放奴隷/資本家から地代生活者へ/解放自由民の中の第一人者〔princeps libertinorum〕

第8章 日本文明とヨーロッパ文明(1962年)
豊田堯(寺本敬子訳)
大陸の影響と日本の独自性/東洋と西洋の統合/日本は西洋文明の模倣者か/ヨーロッパ精神の危機と自覚/自然の描き方の違い/中庸を選んだ日本

第9章 日本近代史についての異端的覚書(1962年)
河野健二(寺本敬子訳)
近代化と西洋化は同義ではない/鎖国と都市化/富農と貧農/揺らぐ幕藩体制/明治維新は民主主義の革命ではなかった

第10章 貴族社会における「若者たち」――北西フランスの十二世紀(1964年)
ジョルジュ・デュビー(中村督訳)
若者――騎士叙任から父親になるまで/放浪、馬上槍試合、戦い/長男の冒険/妻を探す旅/トルバドゥール

第11章 精神分析と歴史学――スパルタの歴史への適用(1965年)
ジョルジュ・ドゥヴルー(下村武訳)
理論的部分/実例――トゥキュディデスの分析、IV、80/抑圧の慣例/集団理想と相互的役割の問題/結論

第12章 18世紀におけるイギリスとフランス――両国の経済成長に関する比較分析試論(1966年)
フランソワ・クルーゼ(井上櫻子訳)
比較という方法の有効性/イギリス経済の優位/十八世紀初頭からフランス革命まで、イギリスとフランスの経済成長は似ている/イギリスに遅れをとったフランス/需要の増大/工場と機械化/両国の違いは程度問題

第13章 女神の排泄物と農耕の起源(1966年)
吉田敦彦(下村武訳)
日本の作物起源神話――『古事記』と『日本書紀』/インドネシアの神話、アメリカの神話/ハイヌウェレ神話/月と熊

第14章 デモクラシーの社会学のために(1966年)
クロード・ルフォール(竹本研史訳)
場の境界画定/鍵概念

第15章 イングランドの農村蜂起、1795―1850年(1968年)
エリック・ホブズボーム(竹本研史訳)
農村の貧困化/1830年の運動/蜂起の地域分布/1830年の運動の挫折後

第16章 黒い狩猟者とアテナイ青年軍事教練の起源(1968年)
ピエール・ヴィダル=ナケ(渡名喜庸哲訳)
アパトゥリア祭/クリュプテイア/対極性と変装/狩猟/メラントスの神話

 原注
 出典一覧
 訳者紹介
 編者・執筆者紹介


関連情報

■歴史学は近年、19世紀の伝統的な形態から脱却してきてはいるが、それは短い時間からの完全な脱却ではない。周知のように、こうした脱却は政治史をおろそかにして、社会経済史への偏重をもたらす結果をもたらした。そこから大きな転換と、明らかな革新性が生じる。必然的に方法の変革と主要な関心領域の移行がもたらされ、それとともに計量歴史学が――その最終的な成果はまだ明らかになっていないが――登場した。
■そしてとりわけ、伝統的な歴史学の時間が変容した。かつての政治史学者にとっては、1日、1年という時間が適切な尺度であるように見えていた。時間とは1日1日の総和である、というわけだ。だが、物価曲線、人口増加、給与の増減、利率の変化、生産量の研究(これはこれまで目指されていただけで実現していなかった)、資本循環の厳密な分析には、もっと大きな時間幅の尺度が必要である。
■こうして、歴史学の語りの新しい形態が現れつつある。いわば、変動局面の、周期の、さらには「間周期的」な「叙述」である。それは、10年という時間、四半世紀という時間、さらには、最大限に見れば、コンドラチェフの言う古典的な、半世紀という時間幅の選択を提示するものだ。たとえば、些細で表面的な偶発事を別にすれば、価格はヨーロッパで、1791-1817年の間に上昇し、1817-52年の間に下降した。こうした上下二つの緩慢な運動は、ヨーロッパの時間、さらには大局的に言って、全世界の時間を完全に示す間周期を表している。こうした時間の尺度には絶対的な価値はないかもしれない。さらに別の事柄の測定、経済成長、収入の増加、国民生産の上昇の測定に対しては、フランソワ・ペルーが、おそらくもっと有効な異なった時間幅を提示することになるだろう。しかし、今日進行中のこの議論はさして重要ではない! とにかく歴史家には新たな時間があるということだ。それは歴史学が、まったく新しい尺度、つまり上述のような曲線やその拍動に応じて切断された結果、組み込まれようとする説明原理に対応する時間である。
(第1章より)


【監修者紹介】
エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリ (Emmanuel Le Roy Ladurie)
1929年生。アナール派の代表的な歴史家。名門のリセ、アンリ4世校を終えたのち、高等師範学校に進んで歴史学を学ぶ。1955年、南フランスのモンプリエ大学に赴任し、近世、近代フランス史を研究、講義。高等研究院第6部門研究指導教授を経て、1973年、ブローデルの後任としてコレージュ・ド・フランスに迎えられ、現在、同名誉教授、フランス学士院会員、元フランス国立図書館長。著書に『ジャスミンの魔女――南フランスの女性と呪術』(1983年、邦訳新評論)、『新しい歴史――歴史人類学への道』『気候の歴史』(1983年、ともに邦訳藤原書店)、『モンタイユー――ピレネーの村』(1974年、邦訳刀水書房)、『ラングドックの歴史』(1966年、邦訳白水社)など。

アンドレ・ビュルギエール (Andr? Burgui?re)
1938年生。主な関心は農民の世界。社会科学高等研究院教授。著書に『風景と農民――10世紀から20世紀までの田舎の歴史』(1991年)、『家族の歴史』(セガレンほかと共同編集、1986年)、『フランス史』(全4巻、ルヴェルと共同編集、1989-1994年)、邦訳論文としては「フランスにおける結婚儀礼――教会の慣習と民衆の慣習」(新版『叢書・歴史を拓く――『アナール』論文選2家の歴史社会学』藤原書店)「60年代の集団的調査――プロゼヴェットでの学際的調査」(関西学院大学先端社会研究所『先端社会研究』第4号)など。

【監訳者紹介】
浜名優美 (はまな・まさみ)
1947年生。早稲田大学大学院文学研究科フランス文学専攻博士課程単位取得満期退学。南山大学総合政策学部教授・南山学園常務理事。専攻は現代文明論・フランス思想。著書『ブローデル『地中海』入門』(藤原書店、2000年)。訳書にブローデル『地中海』Ⅰ―Ⅴ(藤原書店、1991-95年)など多数。

【編者紹介】
●アンドレ・ビュルギエール →監修者紹介参照

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