象徴でなかった天皇――明治史にみる統治と戦争の論理

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  • 岩井忠熊・広岩近広
  • 四六並製 304ページ
    ISBN-13: 9784865782172
    刊行日: 2019/03

なぜ“象徴天皇”であるべきか。平和憲法を守るため、明治史の教訓に学ぶ。

なぜ明治天皇は“元首にして大元帥”にされたか。
日本軍は、天皇の威光伝説を掲げ大陸に侵攻した。
特攻で九死に一生をえた歴史学者と、元事件記者のジャーナリストが、明治が布いた戦争原理を追究する!!



目次


〈巻頭言〉日本近代史の視角――天皇の威光伝説と侵略戦争の接点(岩井忠熊)

第一章 王政復古と武力主義の明治維新
 1 大政奉還と戊辰戦争
 2 陸海軍の創設と徴兵令

第二章 軍事体制の強化と海外派兵
 1 台湾そして朝鮮へ出兵
 2 西南戦争をへて軍政改革

第三章 自由民権運動の弾圧と軍人の統制
 1 政府批判を許さない規制条例
 2 天皇を大元帥にした軍人勅諭
 3 朝鮮支配をめぐり清と対立
 4 大日本帝国憲法と天皇大権

第四章 日清戦争と三国干渉
 1 利益線の朝鮮に出兵
 2 開戦に反対だった明治天皇の役割
 3 日清講和条約と「臥薪嘗胆」

第五章 日露戦争と韓国併合
 1 閔妃惨殺と義和団事件
 2 日露対立とポーツマス条約
 3 満州の軍政をめぐる攻防
 4 韓国の植民地化と国民道徳の教化

あとがき
主な引用・参考文献
人名索引

関連情報

大日本帝国憲法について――起草から枢密院の審議内容まで、国民には何も知らされていません。だから憲法が国家のあり方を決めたのではなく、すでに導入済みの制度を取り込んだ憲法と言えるでしょう。天皇制軍国主義国家を支える憲法にしたかったのです。
まず留意すべきは、天皇の国家統治の大権が皇祖皇宗に由来し、統治の対象が人民ではなく〈臣民〉になっていることです。第四条に〈統治権を総攬し〉とありますが、統治権は議会をその一部とするほかにも、行政各部の官制と文武官の任命権を含みますから、いわゆる官僚機構は天皇の官僚となり、議会の支配下にはありません。
明治政府は天皇の権威に頼って、二十二年間にわたり政権を運営してきました。その基盤を大日本帝国憲法によって固めたのです。
(岩井忠熊)

天皇の名で「詔勅」を発布すると誰も反対できなかった。天皇の意志とは別に、時の権力は、国家の元首である「天皇の権威」を利用したといっても過言ではないだろう。いわゆる「天皇大権」は、政府と軍隊のためにあるのであって、天皇は直接的に関与できなかった。メディアの弾圧に新聞紙法(一九〇四年)の「朝憲紊乱罪」(天皇制国家の基本法を乱す罪)を適用したこともある。
日清戦争は天皇の「宣戦詔書」で始まるが、しかし天皇は開戦に反対だった。日露戦争もしかりで、内廷に入られてから落涙されたという。『明治天皇紀』でこうしたくだりに接すると、戦争をのぞまなかった明治天皇の胸中に、思いを馳せざるをえない。
(広岩近広「あとがき」より)


【著者紹介】
●岩井忠熊(いわい・ただくま)
1922年熊本市生まれ。
京都大学文学部史学科卒業。
1949年から立命館大学の講師、助教授、教授、文学部長、副学長などを務め、1988年に退職。現在、立命館大学名誉教授。専攻は日本近代史。著書は『西園寺公望――最後の元老』(岩波新書、2003年、2017年に復刊)など多数(書名は巻末に掲載)。

広岩近広(ひろいわ・ちかひろ)
1950年大分県生まれ。
電気通信大学電波通信学科卒業。
1975年に毎日新聞社に入社、大阪本社編集局次長をへて2007年に専門編集委員。原爆や戦争を取材し、大阪本社の朝刊連載「平和をたずねて」で第22回坂田記念ジャーナリズム賞を受賞。2016年から客員編集委員。近著に『シベリア出兵 「住民虐殺戦争」の真相』(花伝社、2019年)。

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