旅館おかみの誕生

価格: ¥4,180 (税込)
[ポイント還元 167ポイント~]
数量:
在庫: 在庫あり

返品についての詳細はこちら

twitter

  • 後藤知美 著
  • 四六上製 416頁
    ISBN-13: 9784865783407
    刊行日: 2022/5

民俗学・観光学・女性学を横断する野心作

日本旅館できめ細やかな“おもてなし”をしてくれるのは、なぜ女性の“おかみ”なのか? 昭和50年代頃、旅行番組や旅雑誌等のメディアによって“つくられた”おかみイメージに迫りつつ、女性の仕事としての“旅館のおかみ”の実態を追究。家族の中に入り、家事と家業をともに担ってきたおかみたちの生の声を聞き取って成された労作。


目次

はじめに――なぜ、「旅館のおかみ」なのか

序 章 旅館営業の歴史と「おかみ」
法制度と統計資料にみる歴史/家族従業者としての「おかみ」/本書の構成

第1章 「おかみ」前史
「女将」の成立/「おかみ」のはじまり/イメージの胚胎

第2章 「おかみ」の誕生
運営責任者の役割/もてなしの演出/「佳人」と「おかみ」

第3章 「おかみ」イメージのゆくえ
「おかみ」をやめた女性たち/多様化する旅館と働き方/経営者としての「おかみ」

第4章 イメージと現場の相克
しかけられたイメージ/イメージへの接近/運営責任者としての「おかみ」

第5章 旅館の女主人から「おかみ」へ
O市A地区の旅館営業/旅館業における女主人/組織化と経営業務の導入/「おかみ」の仕事

第6章 「おかみ」の選択と創造
I市B地区の旅館営業/旅館業務/家族・地域における労働や務め/創られる「おかみ」

終 章  「旅館おかみ」とは
まとめ/小経営世帯としての旅館業と「おかみ」/企業経営体としての旅館業と「おかみ」/創られる「おかみ」

おわりに――おかみのこれから

関連情報

 現在のおかみに対するイメージは、「女将」という言葉が持つイメージや用例、日本の観光産業や宿泊業の進展、旅行の大衆化や旅行文化の醸成等がないまぜになって育まれたものであった。それが一般の人々に共有されるに至ったのは、比較的近年の昭和五十年代のことであった。本書では、新聞や雑誌を主な分析対象としながら、旅館おかみを彩るイメージの形成過程について明らかにする。
 注意しなければならないのは、おかみは、人々のイメージを具現化した存在としてのみ旅館内で機能しているわけではなく、旅館営業の一翼を担う存在でもある、という点である。おかみを対象とした観光学分野の研究においても、接客の統括者や従業員の管理者として、おかみたちが実働部分で力を発揮していることが示されている。
(本書より)

著者紹介

●後藤知美(ごとう・ともみ)
静岡県生まれ
2017年筑波大学大学院人文社会科学研究科歴史・人類学専攻修了、博士(文学)
埼玉県教育局市町村支援部生涯学習文化財課(現・文化資源課)職員、埼玉県立歴史と民俗の博物館学芸員を経て、現在、独立行政法人国立文化財機構文化財防災センター(東京文化財研究所)研究員
〈主要論文〉
「創られていく労働観――旅館業を中心として」(2012年「筑波大学地域研究」33号 筑波大学大学院地域研究研究科)、「女性が創るつきあい――子どものお祝いの事例から」(2012年「史境」64号 歴史人類学会)、「女将の誕生――新聞・雑誌記事にみる旅館の女性像」(2016年「現代民俗学研究」8号 現代民俗学会)、「排除し繋がる女性たち――ある町並み保存活動をめぐる考察」(2018年『現代民俗学のフィールド』古家信平編 吉川弘文館)

*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです

ページトップへ