- 渡辺利夫 著
- 四六上製 264頁
ISBN-13: 9784865784497
刊行日: 2025/1
「立国の公道」はナショナリズムである
「欧化主義者」「文明開化論者」「啓蒙思想家」に偏った福澤諭吉像を刷新し、現代日本に求められるその思想の核心に迫る!
(本書は海竜社刊『士魂――福澤諭吉の真実』を改題、加筆修正したものです。)
目次
はじめに
第1章 「正理を守て身を棄る」――殉教 殉死
欧米思想の導入
国民の教科書
天賦人権説
社会契約説
一国独立の権義
ミッヅルカラッス
愚民観
マルチルドム――殉教 殉死
権力に抗する三策
佐倉惣五郎
増田宋太郎の眼の中の西郷
命もいらず名もいらず官位も金もいらぬ人
開化先生はまっぴらだ
王道と覇道
第2章 第二の西郷出でよ――福澤の西郷擁護論
維新最大の功労者
征韓論から西南戦争へ
中華思想の内と外
島津斉彬と橋本左内
福澤はなぜ「逆賊」を擁護したのか
専制の精神 抵抗の精神
反骨の人
西郷批判への反論
第二の西郷を生ずることこそ国のために祝すべき
政府顛覆は「義」
士魂の人よ
第3章 「大砲弾薬は無き道理を造るの器械なり」――『文明論之概略』
「西力東漸」の時代
群雄割拠の世界
文明の暴力性
『通俗国権論』
外交と国民の気力
議論の本位を定る事
文明への熱き想い
文明は独立の手段である
独立を語らぬ文明論など無用である
新しい病としての「外交」
欧人の触るゝ所は恰も土地の生力を絶つがごとし
万国公法は「天地の公道」にあらず
偏頗心と報国心
『文明論之概略』の結論は何か
文明は極致である
独立こそが最優先課題である
第4章 「国は人民の殻なり」――正道と権道
外国交際の大本は腕力に在り
回転する福澤思想
明治十四年の政変
私は権道にしたがう
アジアで先陣を切る日本
国権の事
陸奥宗光
条約改正交渉に進展がないのはなぜか
勢力均衡論
先陣を切るべきは日本
隣家の火事は消さねばならない
士族の精神をもってのみ
第5章 福澤 朝鮮への「恋」――開化派への期待と失意
甲申事変の裏の福澤
『時事新報』創刊
朝鮮 三十年前の日本なり
宗族 集団凝集原理
金玉均
朝鮮 自立のために戦うべし
朝鮮に門下生を派す
甲申事変 開化派の壊滅
東洋の攻略果して如何せん
清国 日本に攻め入らば
東洋の攻略の牛耳を執る者は北京なり
開化派新政府の樹立
敗走
第6章 脱亜論への道――主義とする所は唯脱亜の二字に存るのみ
甲申事変と脱亜論
人間娑婆世界
文明は猶麻疹の如し
古風旧套に恋々する支那朝鮮
隣国の開明を待て共に亜細亜を興すの猶予あるべからず
絶望朝鮮
ロシアの南下政策と巨文島事件
天津条約
朝鮮人民のためにその国の滅亡を賀す
『時事新報』発刊停止処分
時勢いかんともすべからず
第7章 「日清の戦争は文野の戦争なり」――外務卿・陸奥宗光
文明と野蛮
金玉均暗殺
沸き立つ反清感情
清国への方針を確立せよ
清国は「朽木」同然
帝国主義外交の中の陸奥
日清戦争 日本の自衛の道
日清戦争の大義名分
頑固守旧の腐敗国
清国 朝鮮への内政干渉
日朝修好条規
朝鮮併合は目的ではない
日清講和条約
朝鮮 ロシアへの「事大」
三国干渉後の朝鮮
閔妃殺害
事実を見る可し
過剰なる文明主義 無益のこと
第8章 「瘠せ我慢の主義を捨てたる者」――人の食を食む者は人の事に死す
忠臣は二君に仕えず
『瘠我慢之説』
新政府の出仕要請に応じる幕臣
榎本が位を極めていいのか
咸臨丸殉難諸氏記念碑
敗すればその苦難に当たるべし
瘠我慢の一義
立国は私なり公に非ざるなり
三河武士団
勝海舟
行蔵は我に存す 毀誉は他人の主張
おわりに――英人の必ず我れに応ぜんことを信ずるものなり
福澤諭吉 略年譜(1835-1901)
第1章 「正理を守て身を棄る」――殉教 殉死
欧米思想の導入
国民の教科書
天賦人権説
社会契約説
一国独立の権義
ミッヅルカラッス
愚民観
マルチルドム――殉教 殉死
権力に抗する三策
佐倉惣五郎
増田宋太郎の眼の中の西郷
命もいらず名もいらず官位も金もいらぬ人
開化先生はまっぴらだ
王道と覇道
第2章 第二の西郷出でよ――福澤の西郷擁護論
維新最大の功労者
征韓論から西南戦争へ
中華思想の内と外
島津斉彬と橋本左内
福澤はなぜ「逆賊」を擁護したのか
専制の精神 抵抗の精神
反骨の人
西郷批判への反論
第二の西郷を生ずることこそ国のために祝すべき
政府顛覆は「義」
士魂の人よ
第3章 「大砲弾薬は無き道理を造るの器械なり」――『文明論之概略』
「西力東漸」の時代
群雄割拠の世界
文明の暴力性
『通俗国権論』
外交と国民の気力
議論の本位を定る事
文明への熱き想い
文明は独立の手段である
独立を語らぬ文明論など無用である
新しい病としての「外交」
欧人の触るゝ所は恰も土地の生力を絶つがごとし
万国公法は「天地の公道」にあらず
偏頗心と報国心
『文明論之概略』の結論は何か
文明は極致である
独立こそが最優先課題である
第4章 「国は人民の殻なり」――正道と権道
外国交際の大本は腕力に在り
回転する福澤思想
明治十四年の政変
私は権道にしたがう
アジアで先陣を切る日本
国権の事
陸奥宗光
条約改正交渉に進展がないのはなぜか
勢力均衡論
先陣を切るべきは日本
隣家の火事は消さねばならない
士族の精神をもってのみ
第5章 福澤 朝鮮への「恋」――開化派への期待と失意
甲申事変の裏の福澤
『時事新報』創刊
朝鮮 三十年前の日本なり
宗族 集団凝集原理
金玉均
朝鮮 自立のために戦うべし
朝鮮に門下生を派す
甲申事変 開化派の壊滅
東洋の攻略果して如何せん
清国 日本に攻め入らば
東洋の攻略の牛耳を執る者は北京なり
開化派新政府の樹立
敗走
第6章 脱亜論への道――主義とする所は唯脱亜の二字に存るのみ
甲申事変と脱亜論
人間娑婆世界
文明は猶麻疹の如し
古風旧套に恋々する支那朝鮮
隣国の開明を待て共に亜細亜を興すの猶予あるべからず
絶望朝鮮
ロシアの南下政策と巨文島事件
天津条約
朝鮮人民のためにその国の滅亡を賀す
『時事新報』発刊停止処分
時勢いかんともすべからず
第7章 「日清の戦争は文野の戦争なり」――外務卿・陸奥宗光
文明と野蛮
金玉均暗殺
沸き立つ反清感情
清国への方針を確立せよ
清国は「朽木」同然
帝国主義外交の中の陸奥
日清戦争 日本の自衛の道
日清戦争の大義名分
頑固守旧の腐敗国
清国 朝鮮への内政干渉
日朝修好条規
朝鮮併合は目的ではない
日清講和条約
朝鮮 ロシアへの「事大」
三国干渉後の朝鮮
閔妃殺害
事実を見る可し
過剰なる文明主義 無益のこと
第8章 「瘠せ我慢の主義を捨てたる者」――人の食を食む者は人の事に死す
忠臣は二君に仕えず
『瘠我慢之説』
新政府の出仕要請に応じる幕臣
榎本が位を極めていいのか
咸臨丸殉難諸氏記念碑
敗すればその苦難に当たるべし
瘠我慢の一義
立国は私なり公に非ざるなり
三河武士団
勝海舟
行蔵は我に存す 毀誉は他人の主張
おわりに――英人の必ず我れに応ぜんことを信ずるものなり
福澤諭吉 略年譜(1835-1901)
関連情報
矛盾に満ちた人間社会の虚実を怜悧に見据え、なお文明に近づかんとする思想的苦闘が福澤のものだと私は考えます。福澤思想は、戦後につくられたイメージよりはるかに多面的、多層的であり、はるかに懐の深い思想です。福澤像の「既成品」とは距離をおき、福澤自身が書き残した文献に虚心に当たり、真実の福澤の思想像に迫ってみようという思いから本書は生まれました。
福澤は文明開化論者だといわれます。その代表的著作が『文明論之概略』です。同書は「西洋の文明を目的とする事」に始まりますが、この厖大な著作の結論は「国の独立は文明なり、今の我文明はこの目的を達するの術なり」と反転します。この反転論理の綾なす中に福澤思想の核心があるのですが、その論理構造を明らかにした書物を、私は残念ながらみたことがありません。人為的につくられ、そうして閉じられてしまった福澤像の権威に逆らうようなことを人はやりたがらないということなのでしょう。 (「はじめに」より)
福澤は文明開化論者だといわれます。その代表的著作が『文明論之概略』です。同書は「西洋の文明を目的とする事」に始まりますが、この厖大な著作の結論は「国の独立は文明なり、今の我文明はこの目的を達するの術なり」と反転します。この反転論理の綾なす中に福澤思想の核心があるのですが、その論理構造を明らかにした書物を、私は残念ながらみたことがありません。人為的につくられ、そうして閉じられてしまった福澤像の権威に逆らうようなことを人はやりたがらないということなのでしょう。 (「はじめに」より)
著者紹介
●渡辺利夫(わたなべ・としお)
拓殖大学元総長、元学長。
昭和14(1939)年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。同大学院経済学研究科修了。経済学博士。筑波大学教授、東京工業大学教授を経て拓殖大学に奉職。専門は開発経済学・現代アジア経済論。(公財)オイスカ会長。日本李登輝友の会会長。平成23(2011)年、第27回正論大賞受賞。
著書に『成長のアジア 停滞のアジア』(講談社学術文庫、吉野作造賞)、『開発経済学』(日本評論社、大平正芳記念賞)、『西太平洋の時代』(文藝春秋、アジア・太平洋賞大賞)、『神経症の時代――わが内なる森田正馬』(文春学藝ライブラリー、開高健賞正賞)、『アジアを救った近代日本史講義――戦前のグローバリズムと拓殖大学』(PHP新書)、『放哉と山頭火』(ちくま文庫)、『新 脱亜論』(文春新書)、『死生観の時代』(海竜社)、『台湾を築いた明治の日本人』(産経新聞出版/産経NF文庫)など。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです
拓殖大学元総長、元学長。
昭和14(1939)年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。同大学院経済学研究科修了。経済学博士。筑波大学教授、東京工業大学教授を経て拓殖大学に奉職。専門は開発経済学・現代アジア経済論。(公財)オイスカ会長。日本李登輝友の会会長。平成23(2011)年、第27回正論大賞受賞。
著書に『成長のアジア 停滞のアジア』(講談社学術文庫、吉野作造賞)、『開発経済学』(日本評論社、大平正芳記念賞)、『西太平洋の時代』(文藝春秋、アジア・太平洋賞大賞)、『神経症の時代――わが内なる森田正馬』(文春学藝ライブラリー、開高健賞正賞)、『アジアを救った近代日本史講義――戦前のグローバリズムと拓殖大学』(PHP新書)、『放哉と山頭火』(ちくま文庫)、『新 脱亜論』(文春新書)、『死生観の時代』(海竜社)、『台湾を築いた明治の日本人』(産経新聞出版/産経NF文庫)など。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです