プーチン――人間的考察

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  • 木村汎 著
  • A5上製 624頁
    ISBN-13: 9784865780239
    刊行日: 2015/4

現代政治の“スフィンクス”プーチンの実像を解明!

“Mr. Putin, Who?”(プーチンって、一体、誰?)
“What Putin Wants?”(プーチンは何を欲しているのか?)
今、世界がその動向(思惑や出方)を固唾をのんで見守っているロシアのプーチン大統領。ロシア学の権威が、世界に先駆け、その実像を解明した野心的労作である。


目次

 まえがき
 プーチン人脈

はじめに 体制
 三要素からなるハイブリッド/二重構造論/プーチノクラシー/書かれていることより書かれていないこと/
 カフカ『城』の世界/ プーチン=ゴッドファーザー/地位よりもコネ/プーチン・チーム/
 忠誠至上主義/ベルトゥーシカ/準独裁体制

序章 方法
 ロシア式伝統/権力の個人化/パーソナリティー/信条体系/状況/歴史における個人の役割/
 「状況万能主義」の誤り/「プーチンって、誰?」/『第一人者から』の信憑性/
 「顔のない男」に見せかける/プーチンは反射鏡/本書のアプローチ

第1章 住宅
 出自/レニングラード封鎖/生存第一主義/家庭環境/プーチン養子説/窮鼠猫を噛む/
 下品な語呂合わせ/ヴァルダイ会議でも/白いリボンやプッシー/「アナル的比喩」/プーチン式人事/
 マキャベリの教えを実践/脅し/ルール違反者は厳罰

第2章 柔道
 「ヒキワケ」の意味/柔道好きは、日本贔屓か/ジャングルの掟/劣等感の克服法/「通り」の教訓/
 弱い者は打たれる/柔道vsチェス/「ハジメ!」/柔道仲間は大富豪に/プーチン・コネクション/
 ティムチェンコの躍進/徴集されたオリガルヒ/「やわら―ネヴァ」クラブ

第3章 KGB
 KGBへの関心/「屋根」の役割/いつからチェキストに?/プーチンはKGBを辞めたのか?/
 プーチンはスリーパー/チェキストと政治家/KGBの訓練/戦略的思考/目的と手段/KGBの結束/
 「シロビキ」閥/「ダース・ベーダー」/「最も重要な人物」/側近中の側近/ロシア版「太子党」

第4章 東独
 三流の派遣先/同室チェキストの証言/任務/二度も昇進/プーチンのパーソナリティー/
 プーチンの能力や魅力/西側世界を知る/ロシア国内での「精神改革」/ペレストロイカの局外者/
 体制崩壊を目撃/革命嫌悪主義者へ

第5章 市役所
 サンクト・ペテルブルク/プーチンは「ピーテルツィ」/チェキストと知りつつ採用/
 プーチンは「より小さな悪」/KGBのお目付役/「灰色の枢機卿」/ボディー・ランゲージの学習/
 プーチンだけが実践/食糧スキャンダル/資源活用が重要/市場経済について独特の理解/
 安定化基金の功罪/再選キャンペーンでの敗北/市役所勤務の意義

第6章 盗作
 カンディダートの称号を受ける/盗作の疑い/まる写しの主要部分/部下による代作?/
 学長の擁護/知的所有権/論文の内容/ユーコスの国有化/サハリン2は目の上のたんこぶ/
 見事な乗っとり劇/レント・シェアリング・システム/エネルギー至上主義/モノカルチャー思考/
 逆手にとられる危険

第7章 上昇
 ロケット並みの上昇/混乱と困窮/幽霊大統領/エリツィンの試行錯誤/「ファミリー」の意図/
 プーチンは期待どおり?/オリガルヒやコントーラの思惑/KGB陰謀説/選んだ側の思惑/
 ベレゾフスキイの人生哲学/政商ベレゾフスキイ

第8章 人誑し
 花束戦術/虚々実々の交渉/ベレゾフスキイ、キングメーカー気取り/
 役者が一枚上手なのはどちら?/財力vs権力の闘い/ベレゾフスキイの死/家父長的人間観/
 ワンマン支配/絶好のチャンス到来/キャスティング・ボートを握る/人間関係の専門家/
 交わり上手/プーチン=反射鏡/人誑しの名人

第9章 人脈
 ペテルブルク人脈/アウトサイダーからインサイダーへ/サプチャク救出劇/謎の急死/
 犯人は誰?/クセニアの反逆/ナルソワの告発/オーゼロ・グループ/メドベージェフ/
 シビリキ/スルコフ/不死鳥のごとく蘇生/利用価値が残っている/盟友クドリン/
 次期首相候補か/そして誰もいなくなった

第10章 贅沢
 高級腕時計/公私の区別なし/欧州一の大金持/チェキストはビジネスマン/豪邸/
 「ミガルカ」/メルセデスからジルへ/別荘スキャンダル/アブラモビッチの豪遊/
 コートダジュールはロシア通り/なぜ買い漁るのか?/サバイバルのための保険/子弟までもが

第11章 家族
 「内向性」型人間?/リュドミーラとのデート/KGB式意志伝達法/家庭でも秘密主義/
 感情のコントロール/人命軽視/夫婦不仲説/女性蔑視/美人記者に言い寄る/
 不倫スキャンダル/正式離婚/令嬢動静は国家機密/セレブリティーの代償/ボディーガード

第12章 マッチョ
 アウトドア派/誇示の理由/虚栄心/五輪の政治利用/過ぎたるはなお及ばざるがごとし/
 逆効果/背中を痛める/「強い指導者」は時代遅れ/ワンマン支配の落とし穴/
 心身脆弱化によって体制不全/任期はあっても、なきが如し/花道引退シナリオの欠如/
 プーチンの安全保障/“城”には出口がない

第13章 転換
 経済重視主義者/石油ブームの追い風/プーチン式社会契約/中産階級の誕生/
 クレムリン復帰後/大衆迎合主義/経済的正当化を断念/萌芽は存在した/
 プーチン・ドクトリン/保守主義の特徴/反欧米モデル/ナショナリズムにアピール/
 NGOはスパイ/支持率が急上昇/クリミアを取り戻す/小魚を得て、大魚を失う?/
 「ロシア異質論」の復活/プーチンは真の愛国者にあらず

おわりに
 対ロ制裁法が裏書き/歴史でなく伝記を目指す

 注
 プーチン関連年譜(1952-2015)
 謝 辞
 事項索引
 人名索引

関連情報

 十五年前、プーチンがエリツィン元大統領によって後継者に指名されたとき、人々は次の問いを提起したものだった。“Mr. Putin, Who?(プーチンって、一体、誰)”? 以来、われわれが提起する問いは、基本的には変わっていない。いや、事実上十五年間におよぶ統治ですっかり実力をつけたプーチン大統領にたいする世間の関心は、増大する一方と評してよい。全世界はロシア大統領が発する片言隻句に注目し、その一挙手一投足に刮目し、よって彼の心中にあるものを推し量ろうと懸命になる。
 そのような指導者、ウラジーミル・ウラジーミロビッチ・プーチンとは、一体どのような人物なのか? 彼は何をたくらみ、何を仕出かそうとしているのか。現代の国際政治にいささかでも関心を抱く者すべてにとって、プーチノロジー(プーチン学)は避けて通ることのできない設問。こういって、過言でなかろう。本書は、この問いにたいするささやかな挑戦の試みである。
(「はじめに」より)

■「プーチンって、一体誰?」――この問いにたいする答えは最初から見出されるはずがなかったともいいえよう。なぜならば、プーチンとは、「可塑性に富んだ鋳型のテンプレート」であることを、意図的に目指している人物にほかならないからである。
■もしそうだとすれば、そのような表向き用の顔ではなく、彼の本当の顔を捉えるためには、一体どうすればよいのだろうか?
■プーチノクラシーの主要な特性に適合したアプローチを採用すべしというのが、私の考え方である。プーチノクラシーの際立った特徴は、それがインフォーマルに形成されたプーチン・チームによって運営されている点にある。そのチームは、プーチンが己の血縁、地縁、学閥、職歴、趣味、別荘……等々を通じて形成してきた人脈からなる。そして、そのようなインフォーマルな人的ネットワークの総元締め(「ゴッドファーザー」)が、プーチンその人にほかならない。
■地域や職場でプーチンは、たとえばどのような人々と出遭い、交際し、かれらの影響を受けて、己の人生観や政治的信条を形成していったのか? また、一体どのような「状況」に遭遇し、彼はそれらに対処しようとしたのか? その軌跡を追体験することによってはじめて、謎に包まれた「ブラック・ボックス」、プーチンの実像に、われわれは一歩なりとも近づくことが可能になるだろう。
(「序章」より)

著者紹介

●木村汎(きむら・ひろし)
1936年生まれ。京都大学法学部卒。米コロンビア大学Ph.D.取得。北海道大学スラブ研究センター教授、国際日本文化研究センター教授を経て、現在、北海道大学および国際日本文化研究センター名誉教授、拓殖大学客員教授。専攻はソ連/ロシア研究。
主な著書として、『ソ連とロシア人』(蒼洋社)、『ソ連式交渉術』(講談社)、『総決算 ゴルバチョフ外交』(弘文堂)、『ボリス・エリツィン』(丸善ライブラリー)、『プーチン主義とは何か』(角川oneテーマ21)、『遠い隣国』(世界思想社)、『新版 日露国境交渉史』(角川選書)、『プーチンのエネルギー戦略』(北星堂)、『現代ロシア国家論――プーチン型外交』(中央公論叢書)『メドベージェフvsプーチン――ロシアの近代化は可能か』(藤原書店)など編著書多数。

*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです

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