プーチン――内政的考察

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  • 木村汎 著
  • A5上製 624頁
    ISBN-13: 9784865780932
    刊行日: 2016/10

プーチンはロシアをどう変えてきたか?

言論弾圧、経済疲弊、頭脳流出――混迷のロシアは何処に向かうのか?
ロシア史上、稀に見る長期政権を継続中のプーチン。
「強いロシアの再建」を掲げ、国内には苛酷な圧政を敷く一方、経済は低迷、内政の矛盾は頂点に達している。ロシア研究の碩学が沈みゆく大国“プーチンのロシア”の舞台裏を詳細かつ多角的に検証する。


目次

 本書の狙いと構成
 ロシア連邦地図

第1章 体験
プーチニズム/生存志向メンタリティー/打ち勝ち補償/サバイバリスト/なぜ、チェキストに?/大きな「屋根」志向/体制崩壊を目のあたりに/プーチンが汲み上げた教訓/革命嫌悪主義者へ/反プーチン抗議デモ

第2章 思想
「強いロシア」の再建/国家権力の強化/プーチン流三段論法/新しいイデオロギー提唱の必要/「保守主義」の特徴/反米欧モデル/ナショナリズムにアピール

第3章 制度 
エリツィンによる地方分権化/再び中央集権化/翼賛議会化/驕る「統一ロシア」/“アメ”戦術/知事公選制――譲歩の水割り/政党法改正のトリック/大盤振る舞い/反対運動の抑圧/公平な選挙/「統一ロシア」/中道リベラル、大同団結が苦手/管理される民主主義/「過剰に管理される民主主義」

第4章 軍事改革
プーチンの課題/チェチェン戦争/軍事力だけでは不充分/ロシア―ジョージア戦争/戦争の反省点/軍の近代化/軍事改革の必要性/行き詰った徴兵制/「いじめ」の横行/契約兵制へ/転換を阻む要因/将校たちの旧思考/徴集兵+契約兵のミックス/一〇〇万人体制は、実現困難

第5章 文民統制
国防省vs参謀本部/初の文民国防相?/「文民統制」とは何か?/イワノフ国防相をどうみるか?/チェチェン戦争が影を落す/文民統制と民主主義/もちつもたれつの関係/ロシアの特殊事情/分業説/軍部にたいする借り

第6章 国防相 
国防相に誰を据えるか/セルジュコフの任命/セルジュコフの課題/脅威の源/聖域、軍産複合体/大胆すぎた介入/汚職や不倫/セルジュコフの解任/ショイグの出自と経歴/トップを目指す野心なし/ショイグが引き継いだもの/危険な綱渡り/身分不相応な巨額の支出/こけ威しの新兵器/核の脅し

第7章 メディア 
 グラースノスチを逆転/テレビを最重視/鵞鳥狩り/キングメーカーすら容赦せず/政権PRの主要手段として/敵か味方か/メディアの買収/レーシンの不審な死/兵糧攻め/人事権の行使/“こだま”は鳴りつづけるのか/“雨”は止むのか/死はわが職業/『ノーバヤ・ガゼータ』/殺害の脅し/今後

第8章 NGO
プーチン、クレムリンに復帰/ロシアの変貌/中産階級の誕生/リプセットの法則/プーチン&側近の思惑/兵糧攻め/NGOはスパイ/NGOの定義なし/誇張された数字やイメージ/ゴーロスが第一号/次の標的/「トロイの木馬」

第9章 国際NGO
「母の会」の抗議/法案の修正/「ダイナスチ財団」すらも/「自由な使命」潰し?/国際的NGOの禁止/ロシア版“マッカーシズム”/ボランティア活動も取り締まる/ガス抜きの窓すら閉じる/自力が基本/指導者と社会の乖離/亀裂防止が必要なのだが

第10章 ナヴァーリヌイ 
個人攻撃/反対派の期待の星/本章および次章の課題/出自と教育/上から下まで汚職まみれ/ナヴァーリヌイの手法/「詐欺師と泥棒の党」がヒット/プーチンの別動隊/逮捕に次ぐ逮捕/バストルイキン捜査委員長/五年の有罪判決/非難の合唱

第11章 モスクワ市長選 
前代未聞の釈放/ソビャーニンの意図/プーチンの思惑/市長選で善戦/ソチ五輪前の攻防/五輪後の弾圧/ナショナリスト/ウクライナ危機はリトマス試験紙/プーチンとの違い/ナヴァーリヌイの訴え/団結こそが鍵なのだが……

第12章 危機
明暗二重奏/原油価格の急落/国民の苦しみ/「二年間」の辛抱/「危機のピークを越えた」/ウォッカの値下げ/G7による経済制裁/ロシアの損害/クドリンの懸念、的中/メドベージェフ路線に抗議/産業構造の変革/社会、政治改革も必須/安定化基金も枯渇/二〇〇八―〇九年よりも深刻

第13章 当確
大統領選の前倒し案/クドリンの懸念/二〇一八年、当選確実/プーチノミクスの功績/歴史的背景/「強い指導者」希求の伝統/「二匹の熊は一つの穴では仲良く暮らせない」/国民の負荷能力/節約耐乏生活

第14章 存続 
受動性と諦観/「大衆社会」的状況/納税者意識が未成熟/税金半額の功罪/ロシア人がストに立ち上るとき/自動車税には抗議/公務員が中核/伸び悩む中産階級/人たらし/国民の代弁者/脆弱な反対諸勢力/ナヴァーリヌイのみが見所だが……

第15章 衰退
三つのシナリオ/ロシア式世論調査/政権迎合傾向/プーチンは“より小さな悪”/プーチン支持率も上下する/持続可能な支持率なのか/冷蔵庫vsテレビの闘い/海外移住熱の高まり/移住の動機/ノーベル賞級学者も/相次ぐ頭脳流出/反体制派の脱出/欧米で吼える反体制知識人

第16章 今後
二大勢力の合体シナリオ/側近たちの不満/スキャンダル報道/“本丸”攻撃の前兆か?/プーチンの先制攻撃/ヤクーニンの解任/パンフィローワを抜擢/再び、タンデム政権を示唆?/クーデターは成功するのか/人民叛乱に呼応?/シロビキこそが脅威/国家親衛隊――創設の意図/レジーム・チェンジは望まず/プーチンなきプーチノクラシー?

  謝辞
  プーチン関連年表(一九八五―二〇一六)
  注
  事項索引
  人名索引

関連情報

■現ロシアは“プーチンのロシア”以外の何物でもない。ロシアの作家、ウラジーミル・ソローキンは記した。ロシアは、「その指導者、プーチンの気が向くままに自由自在に動く存在へと堕落してしまった」と。
■プーチノクラシー(プーチン統治)は、もっぱらプーチン個人の意向や力量に依拠するシステムにほかならない。プーチンなしには一日たりとも存続が困難である。
■いま、プーチンは“攻め”から“守り”へと基本姿勢を転換した。己の政治的サバイバルに戦々兢々としている。これは、政権が末期的症状にあることの一証左とみなせるかもしれない。じじつ、ヒトもカネもプーチン・ロシアから流出する一方のようである。まるで船の難破を予知して鼠が逃げ出すように。
(「第16章 今後」より)

■プーチン政権は、今日すでに16年以上もつづいている。仮に米国大統領が2期8年勤めるにしても、その2倍以上の長さである。
■プーチンが一貫して提唱している政治的主張は「強いロシアの再建」である。ロシア連邦を米国と並ぶグローバルな超大国へと復活させるという野望である。
■ソチ五輪やクリミア併合という華々しい打ち上げ花火によってプーチンの支持率は80%台にまで上昇し、シリアの空爆直後には89.9%にも達した。
■一方、国際原油価格の大暴落に端を発する原油安、ルーブル安、さらにクリミア併合に対する米欧の経済制裁という、経済“三重苦”に直撃され、ロシア経済はなす術がないようにすら思われる。
■派手な打ち上げ花火によって、ロシア国内の失政、なかんずく経済的困難から国民の目をそらす――。このようなプーチン式「手品」は、はたして何時まで有効なのか。これが、今後のプーチノクラシー(プーチン統治)の最大の見どころである。
(「本書の狙いと構成」より)

著者紹介

●木村汎(きむら・ひろし)
1936年生まれ。京都大学法学部卒。米コロンビア大学Ph.D.取得。北海道大学スラブ研究センター教授、国際日本文化研究センター教授を経て、現在、北海道大学および国際日本文化研究センター名誉教授、拓殖大学客員教授。専攻はソ連/ロシア研究。主な著書として、『ソ連とロシア人』(蒼洋社)、『ソ連式交渉術』(講談社)、『総決算 ゴルバチョフ外交』(弘文堂)、『ボリス・エリツィン』(丸善ライブラリー)、『プーチン主義とは何か』(角川oneテーマ21)、『遠い隣国』(世界思想社)、『新版 日露国境交渉史』(角川選書)、『プーチンのエネルギー戦略』(北星堂)、『現代ロシア国家論――プーチン型外交』(中央公論叢書)『メドベージェフvsプーチン――ロシアの近代化は可能か』『プーチン――人間的考察』(藤原書店)など著書多数。

*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです

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