奇跡の対話――渋沢栄一の孫とアイヌの母神

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  • 鮫島純子・宇梶静江 著
  • 四六変上製 320頁
    ISBN-13: 9784865783629
    刊行日: 2022/10

2人あわせて190歳、未来へのメッセージ。

渋沢栄一の孫として東京に生まれ、女子学習院で学んだ鮫島純子と、
北海道のアイヌ集落に生まれ、20歳で中学に入学した宇梶静江。
ともに戦争、結婚、子育てを経験し、“女性として”
“人間を超えた力に生かされている”ことに感謝する二人の、
“生きる力”あふれる対話。

◎二人の自伝を収録!


目次

Ⅰ 奇跡の対話
 一 渋沢栄一の孫として――鮫島純子の子ども時代
頭をなでてくれた祖父、渋沢栄一/「お読み上げの時間」と落語/新渡戸稲造先生との語らい/渋沢栄一の心と、世界の平和への念い ……ほか

 二 北の大地に生まれて――宇梶静江の子ども時代
父の田んぼを手伝う、そして差別/アイヌはみんなで分けあって、喜びあって歌を歌う/両親のぬくもりが、私をつくった/アイヌに川一本でも返してください ……ほか

 三 奇跡の出会い――190歳の対話
一挙手一投足に神様を感じて――静江さんに学んで/白老に移住して、「場」をつくる/カッケマツの女らしい強さ――アイヌに学ぶ ……ほか

 四 甘くは生きてこなかった――宇梶静江、現在まで
知里真志保先生との出会い/友だちに誘われ、父の承諾を得て上京/壺井繁治先生のもとで詩を書きはじめる/自分自身を認めるということ ……ほか

 五 地球が平和になるまで――鮫島純子、現在まで
自分の内面を見つめて/師との出逢いが人生を変えた/戦争中の食べ物のこと/祖父の考えを受け継いだ父のこと ……ほか

 六 未来へのメッセージ――むすびの対話
経済の冷たい力ではなく、温かいアイヌの力を/「世界人類が平和でありますように」と祈るだけです/母親という大切な仕事/「アイヌ学」に、ともに期待する ……ほか

Ⅱ 宇梶静江の歩み
 一 生い立ち
大地震の中での誕生/開放的だった母のこと/相撲が強かった父“ツネさん”/きれいなものが好きだった/海の美しさに感動した/「戦争が終わったら、こんないいことない」/卒業証書がない、就職できない/冬の間に和裁・洋裁を習得 ……ほか

 二 勉強がしたい
「嫁には行かない。学校に行く」/20歳で、札幌の中学校へ/知里真志保先生の御恩/アイヌモシリを離れて東京へ/喫茶店勤めから結婚へ ……ほか

 三 ウタリたちとともに
『詩人会議』でのデビュー/1972年、『朝日新聞』投稿「ウタリたちよ、手をつなごう」/東京のアイヌの実態調査/「内なるアイヌ」ともがき続けた/「古布絵」を発見 ……ほか

Ⅲ 鮫島純子の歩み
 一 家族のこと
備中池田家出身の母/才媛だった渋沢栄一の長女/渋沢家の同族会/従兄、渋沢敬三のこと ……ほか

 二 幼稚園から女子学習院まで
女子師範附属竹早幼稚園に通う/女子師範附属竹早小学校/日本女子大附属の女学校/女子学習院に入学/西ヶ原の家/西巣鴨の家/不穏な時代の空気と、渋沢家の平和思想 ……ほか

 三 結婚と戦争中の生活
鮫島家と岩倉家/婚約、そして結婚/三回の披露宴、その最中の空襲/仲人をしてくださった鈴木貫太郎首相 ……ほか

 四 戦火の中の子育て
日米開戦、父の死/名古屋に転勤/大地震と空襲/平岡円四郎さんの御縁で ……ほか

 五 戦後の日々
終戦の日/やっと東京で家族一緒に/疲れ果てて戦地から戻った義父/義母との生活/精神的成長を日々感じながら ……ほか

渋沢家系図/池田家系図/岩倉・鮫島家系図/関連年譜

関連情報

●宇梶 アイヌが温かくなれば、北海道も温かくなります。北海道が温かくなると、応援している人たちみんなが温かくなる。温かくなければ、平和とは言えません。冷たい経済では、平和にはできません。私はそう思っています。冷たさの中では、喜びは、冷やっこいものに変わるだけです。

●鮫島 いまの日本の状態を考えると、宇梶さんのおっしゃるように、お金、お金という時代になってしまって、これは間違った方向だなと思います。私のように、別に学歴があるわけでも何でもない主婦のできること、しかももうここまで歳を取ってしまってできることは、「世界人類が平和でありますように」と祈ることだけです。

(本書より)

著者紹介

●鮫島純子(さめじま・すみこ)
1922年9月26日、東京生まれ。エッセイスト。祖父は日本合本主義の礎を築いた渋沢栄一、父は栄一の四男で実業家の渋沢正雄。1942年、岩倉具視の曽孫・鮫島員重と結婚、男児三人に恵まれる。夫の勤務地・名古屋で大空襲を経験。
夫の退職後、1983年ごろから夫婦でスケッチや朝の散歩など、日常生活の中でできる健康法を実践、心の持ち方をポジティブに保つよう心がける。10年余り、水墨画の目黒巣雨氏に師事。1999年、夫を自宅で介護し見送る。
著書に『祖父・渋沢栄一に学んだこと』(文藝春秋)『忘れないで季節のしきたり日本の心』『あのころ、今、これから… ――今の日本、このままでいいですか? 昔の生活に見る「再生」のヒント。』『毎日が、いきいき、すこやか』『子育て、よかったこと、残したいもの』(小学館)『97歳、幸せな超ポジティブ生活』(三笠書房)『なにがあっても、ありがとう』(あさ出版)『100歳の幸せなひとり暮らし――穏やかな心と健康を保つ100のヒント』(光文社)など。講演会や雑誌への寄稿も多数。

●宇梶静江(うかじ・しずえ)
1933年3月3日、北海道生まれ。詩人、古布絵作家、アイヌ文化伝承者。幼少期を北海道浦河郡の和人混在のアイヌ集落で過ごす。1956年札幌の私立北斗学園中等科を卒業。直後に上京、1959年に結婚。二児の母に。
1966年から『詩人会議』同人となり詩を書く。1972年2月8日、『朝日新聞』に「ウタリたちよ、手をつなごう」投稿が掲載。翌年「東京ウタリ会」を設立。1996年、アイヌ伝統刺繍の技法を基に、ユーカラに語られてきた叙事詩を表現するオリジナルな“古布絵(こふえ)”を確立。2011年、古布絵作家としての活動が評価され、吉川英治文化賞。2020年、後藤新平賞。
著書に『シマフクロウとサケ』(藤原書店)、『セミ神さまのお告げ』(福音館書店)、『すべてを明日の糧として――今こそ、アイヌの知恵と勇気を』(清流出版)、詩集『ヤイコイタク ひとりごと』(宇梶静江詩集刊行会)など。

*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです

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