ゾラ・セレクション〈新版〉(全11巻・別巻1) 6 獣人――愛と殺人の鉄道物語

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  • エミール・ゾラ 著
  • 寺田光徳 訳・解説
  • 四六変並製 536頁
    ISBN-13: 9784865785104
    刊行日: 2026/9

資本主義社会に生きる人間の矛盾を抉る“鉄道ミステリー”の先駆!

夫と共謀し殺人を犯す妻、官能の果てに愛する人妻を刺し殺す機関士……人間の“獣性”を描きつくす、「ルーゴン゠マッカール叢書」大人気作。仏第二帝政期、時代の先頭を疾駆する「鉄道」を中心に据え、近代社会の裏と表を抉る。


関連情報

こうした列車の機械的な轟音、つまり社会的、知的成果を背景にして、神秘的で胸をえぐるようなドラマによって示したいのは、感情面での現在の状況、言い換えれば人間の奥底にひそむ野蛮さである。 (エミール・ゾラ)

◆鉄道によって同時代の社会と人々を活写
「叢書」中屈指の人気を誇る、探偵小説的興趣をもった作品。西部鉄道ル・アーヴル駅の助役ルボーが妻のセヴリーヌと謀って裁判長のグランモランを走る車中で殺害する。主人公の機関士ジャックはその殺人を偶然目撃するが、セヴリーヌに惹かれて事件の証言を拒み、それが機縁となって彼女が今度は彼の愛人となる。だが最後にジャックは女性に対する魅惑と恐怖の衝動に駆られて、発作的に彼女を自らの手で殺害してしまう。これがジャックを「獣人」と称させるゆえんである。

第二帝政期に鉄道は文明と進歩の象徴として時代の先頭を疾駆していた。この小説の影の主人公が鉄道であると読みとることができれば、鉄道を駆使して同時代の社会とそこに生きる人々の感性を活写し、小説に新境地を切り開いた、ゾラの斬新さが理解できる。 (寺田光徳)

著者紹介

●エミール・ゾラ Émile Zola(1840-1902)
1840年、パリに生まれる。フランスの作家・批評家。22歳ごろから小説や評論を書き始め、美術批評の筆も執り、マネを擁護した。1862年、アシェット書店広報部に就職するが、1866年に退職。1864年に短編集『ニノンへのコント』を出版、1865年に処女長編『クロードの告白』を出版。1870年、アレクサンドリーヌ・ムレと結婚する。1871年、ライフワークたる『ルーゴン・マッカール叢書』第1巻『ルーゴン家の繁栄』を出す。その後『居酒屋』、『ジェルミナール』を経て1893年、『パスカル博士』をもって『ルーゴン・マッカール叢書』は完結。また自然主義文学の総帥として論陣を張り、『実験小説論』(1880年)を書いた。1888年、女中ジャンヌ・ロズロとの関係が生じ、その後2児をもうける。1891年には文芸家協会会長に選出される。1897年暮れからドレフュス事件においてドレフュスを擁護、1898年1月、「私は告発する!」という公開状を発表。そのため起訴され、同年7月イギリスに亡命。翌年6月に帰国、空想社会主義的な『豊穣』『労働』などを書いたが、1902年9月29日、ガス中毒により急死。葬儀では作家アナトール・フランスが、「人類の良心を体現した」とゾラを讃えた。遺骸は1908年にパンテオン廟に移された。

【訳者紹介】
●寺田光徳(てらだ・みつのり)
1947年生。熊本大学名誉教授。専門は19世紀フランス文学。大阪市立大学大学院文学研究科博士課程単位修得退学。博士(文学)。
著書に『梅毒の文学史』(平凡社)、『欲望する機械――ゾラの「ルーゴン゠マッカール叢書」』『ゾラの芸術社会学講義――マネと印象派の時代』、共著に『ゾラ・セレクション別巻 ゾラ事典』(以上藤原書店)他。訳書にM・セール『火、そして霧の中の信号――ゾラ』、M・ピカール『時間を読む』、H・アトラン『正も否も縦横に──科学と神話の相互批判』(以上法政大学出版局)、C・ケテル『梅毒の歴史』(藤原書店)他。

*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです

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