- エマニュエル・トッド 著
- 荻野文隆 訳
- 普及版へのあとがき=荻野文隆
- A5並製 576頁 〈付〉カラー地図
ISBN-13: 9784865784633
刊行日: 2025/5
トッドの主著、若き日の革命的著作!
“家族構造”の分析で、全く新しい世界認識を提示するトッド理論の原点!
「『世界の多様性』は、西欧を中心とした今日のグローバル・イデオロギーへの警鐘の書である」(訳者)
目次
序文
●第三惑星――家族構造とイデオロギー・システム
民主主義と人類学/七つの家族類型/共同体型/権威主義型/二つの個人主義/内婚制型/非対称型/アノミー型/アフリカ型/偶然
●世界の幼少期――家族構造と成長
成長への文化的アプローチ
第Ⅰ部 家族構造と識字化
一つの人類学モデル/ヨーロッパ/ロシア/第三世界のテイクオフ――東アジアとアメリカのインディオ/2000年の第三世界――イスラム、インド北部、アフリカ
第Ⅱ部 近代性の諸次元――識字化の社会的帰結
政治的近代性/人口動態上の近代性/経済的近代性
巻末附録1 1970―1980年代における第三世界の統計データ
巻末附録2 1930年代におけるヨーロッパの統計データ
原注/参考文献/図表一覧
〈訳者解説〉多様性と歴史性
普及版への訳者あとがき
●第三惑星――家族構造とイデオロギー・システム
民主主義と人類学/七つの家族類型/共同体型/権威主義型/二つの個人主義/内婚制型/非対称型/アノミー型/アフリカ型/偶然
●世界の幼少期――家族構造と成長
成長への文化的アプローチ
第Ⅰ部 家族構造と識字化
一つの人類学モデル/ヨーロッパ/ロシア/第三世界のテイクオフ――東アジアとアメリカのインディオ/2000年の第三世界――イスラム、インド北部、アフリカ
第Ⅱ部 近代性の諸次元――識字化の社会的帰結
政治的近代性/人口動態上の近代性/経済的近代性
巻末附録1 1970―1980年代における第三世界の統計データ
巻末附録2 1930年代におけるヨーロッパの統計データ
原注/参考文献/図表一覧
〈訳者解説〉多様性と歴史性
普及版への訳者あとがき
関連情報
ヨーロッパ大陸のテイクオフは、権威主義で女性主義、縦型で双系制の人類学システムが持つ根底的な働きによって引き起こされた。両性間の関係がより平等主義的で母親に実際的な権力を委ねるこのシステムは、強い教育的な潜在力を持つ。活版印刷の発明からフランス革命にかけて、大衆の教育が発達したのは、スカンジナヴィア、スコットランド、ドイツといった権威主義家族の地域であった。
ユダヤ・キリスト教世界の外部で権威主義家族構造が支配的な地域は二つしかない。日本と韓国である。この二つの国は、非西欧世界のなかではテイクオフを遂げた最初の国であり、西欧諸国を国民一人当りの生産高で追い抜こうとしている。人口動態の分析によると、韓国・朝鮮のテイクオフは1920―1970年の時期となる。同一の方法を日本に当てはめると興味深い。このはるか遠くの国のテイクオフが、人類学的、人口動態的にみると、ヨーロッパのテイクオフとおそらく同じくらい古いものであることを示唆している。
(「世界の幼少期」第2、4章より)
ユダヤ・キリスト教世界の外部で権威主義家族構造が支配的な地域は二つしかない。日本と韓国である。この二つの国は、非西欧世界のなかではテイクオフを遂げた最初の国であり、西欧諸国を国民一人当りの生産高で追い抜こうとしている。人口動態の分析によると、韓国・朝鮮のテイクオフは1920―1970年の時期となる。同一の方法を日本に当てはめると興味深い。このはるか遠くの国のテイクオフが、人類学的、人口動態的にみると、ヨーロッパのテイクオフとおそらく同じくらい古いものであることを示唆している。
(「世界の幼少期」第2、4章より)
著者紹介
●エマニュエル・トッド(Emmanuel TODD)
1951年生。歴史人口学者・家族人類学者。元フランス国立人口統計学研究所(INED)所属。
1976年、『最後の転落』(邦訳2013年)で、弱冠25歳にして旧ソ連の根本的な脆弱さを分析し、崩壊の予言ともなった。その後、1999年の本書『世界の多様性』(邦訳初版2008年。『第三惑星』1983年と『世界の幼少期』1984年の合本)で世界各地の「家族構造」と「社会の上部構造(政治・経済・文化)」の連関性を地球規模で明らかにした。2011年、この家族構造の分析は『家族システムの起源 I ユーラシア』(邦訳2016年)で、人類史における人類学的な変遷の歴史と地政学的な影響関係の解析へと深化拡充された。また『崩壊した「中国システム」とEUシステム』(荻野文隆編、藤原書店、2019年)への寄稿では、新自由主義のグローバル化の中でフランスの没落を止めるには、英国のブレグジットに倣ってEUユーロシステムからの離脱が不可欠と強調。併せて、EU・NATO体制の対露姿勢の危険性を批判し、深刻な紛争を警告。
その他の著書に、『新ヨーロッパ大全』(1990年、邦訳1992、93年)、『移民の運命――同化か隔離か』(1994年、邦訳99年)、『経済幻想』(1998年、邦訳99年)、『帝国以後――アメリカ・システムの崩壊』(2002年、邦訳03年)、『文明の接近――「イスラームvs西洋」の虚構』(クルバージュと共著、2007年、邦訳08年)、『デモクラシー以後――協調的「保護主義」の提唱』(2008年、邦訳09年)、『アラブ革命はなぜ起きたか――デモグラフィーとデモクラシー』(2011年、邦訳11年)、『不均衡という病――フランスの変容1980-2010』(ル・ブラーズと共著、2013年、邦訳14年)(以上、邦訳藤原書店)がある。また『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(2017年、邦訳22年)『西洋の敗北――日本と世界に何が起きるのか』(2024年、邦訳24年)(以上、邦訳文藝春秋)他。
【訳者紹介】
●荻野文隆(おぎの・ふみたか)
1953年生。東京学芸大学名誉教授。フランス文学・思想。パリ第三大学文学博士。
編著・共編著に『崩壊した「中国システム」とEUシステム――主権・民主主義・健全な経済政策』(2019、藤原書店)、『他者なき思想――ハイデガー問題と日本』(1996、藤原書店)、『多言語・多文化社会へのまなざし――新しい共生への視点と教育』(2008、白帝社)、『パリの街角で――音声ペンで学ぶフランス語入門』(2015、両風堂)。
共著『来るべき〈民主主義〉』(2003、藤原書店)他。
論文「夏目漱石とフランス――平等主義と自由主義」(『世界文学』126号、2017)「フランス大統領選挙とEU・ユーロ体制」(『善隣』No. 484、2017)「ロシア・ウクライナ戦争をどう見るか」(『機』No.383、2024)他。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです
1951年生。歴史人口学者・家族人類学者。元フランス国立人口統計学研究所(INED)所属。
1976年、『最後の転落』(邦訳2013年)で、弱冠25歳にして旧ソ連の根本的な脆弱さを分析し、崩壊の予言ともなった。その後、1999年の本書『世界の多様性』(邦訳初版2008年。『第三惑星』1983年と『世界の幼少期』1984年の合本)で世界各地の「家族構造」と「社会の上部構造(政治・経済・文化)」の連関性を地球規模で明らかにした。2011年、この家族構造の分析は『家族システムの起源 I ユーラシア』(邦訳2016年)で、人類史における人類学的な変遷の歴史と地政学的な影響関係の解析へと深化拡充された。また『崩壊した「中国システム」とEUシステム』(荻野文隆編、藤原書店、2019年)への寄稿では、新自由主義のグローバル化の中でフランスの没落を止めるには、英国のブレグジットに倣ってEUユーロシステムからの離脱が不可欠と強調。併せて、EU・NATO体制の対露姿勢の危険性を批判し、深刻な紛争を警告。
その他の著書に、『新ヨーロッパ大全』(1990年、邦訳1992、93年)、『移民の運命――同化か隔離か』(1994年、邦訳99年)、『経済幻想』(1998年、邦訳99年)、『帝国以後――アメリカ・システムの崩壊』(2002年、邦訳03年)、『文明の接近――「イスラームvs西洋」の虚構』(クルバージュと共著、2007年、邦訳08年)、『デモクラシー以後――協調的「保護主義」の提唱』(2008年、邦訳09年)、『アラブ革命はなぜ起きたか――デモグラフィーとデモクラシー』(2011年、邦訳11年)、『不均衡という病――フランスの変容1980-2010』(ル・ブラーズと共著、2013年、邦訳14年)(以上、邦訳藤原書店)がある。また『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(2017年、邦訳22年)『西洋の敗北――日本と世界に何が起きるのか』(2024年、邦訳24年)(以上、邦訳文藝春秋)他。
【訳者紹介】
●荻野文隆(おぎの・ふみたか)
1953年生。東京学芸大学名誉教授。フランス文学・思想。パリ第三大学文学博士。
編著・共編著に『崩壊した「中国システム」とEUシステム――主権・民主主義・健全な経済政策』(2019、藤原書店)、『他者なき思想――ハイデガー問題と日本』(1996、藤原書店)、『多言語・多文化社会へのまなざし――新しい共生への視点と教育』(2008、白帝社)、『パリの街角で――音声ペンで学ぶフランス語入門』(2015、両風堂)。
共著『来るべき〈民主主義〉』(2003、藤原書店)他。
論文「夏目漱石とフランス――平等主義と自由主義」(『世界文学』126号、2017)「フランス大統領選挙とEU・ユーロ体制」(『善隣』No. 484、2017)「ロシア・ウクライナ戦争をどう見るか」(『機』No.383、2024)他。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです