- 菊大並製 448ページ
ISBN-13: 9784894348691
刊行日: 2012/07
「日本とは何か」を問うことは、「アメリカとは何か」を問うことである。
目次
■■ 特集:アメリカとは何か ――チャールズ・ビーアドを軸に ■■
アメリカはどこへ向かっているのか〔ビーアドが衝いたアメリカの「独善」〕 開米潤
□チャールズ・ビーアド『ルーズベルトの責任』を読む
岡田英弘 欺瞞に基づく日本の長い戦後
小倉和夫 日米関係をめぐる神話と現実
小倉紀蔵 ふたつの民主主義
川満信一 沖縄でこそ、読まれて欲しい本
榊原英資 昭和の日本外交の拙劣さ
新保祐司 古武士ビーアド
中馬清福 書かれた歴史の深層にあるもの
西部 邁 大衆へのデマゴギーとマヌーヴァ
松島泰勝 「ルーズベルトの責任」と「日本の責任」
三輪公忠 大政治家ルーズヴェルト
渡辺京二 国際政治からの解放〔戦後世界史の予告〕
帝国主義は憲法違反、アメリカ精神に反する
〔『アメリカ精神の歴史』『アメリカ合衆国史』『ルーズベルトの責任』より〕
チャールズ・A・ビーアド(編訳=丸茂恭子)
アメリカ史とは何か〔チャールズ・ビーアドをめぐって〕 入江 昭
〈インタビュー〉アメリカ憲法とビーアド 阿川尚之
ビーアドによる合衆国憲法制定の解釈 阿部直哉
□同時代人によるビーアド評価
M・ジョセフソン/R・ホフスタッター/H・K・ビール/H・J・ラスキ
〈座談会〉ビーアド博士をしのびて〔その人と学風と業績〕(ビーアド没10年記念座談会 1958年)
?山政道+高木八尺+鶴見祐輔+松本重治 (司会)前田多門
〈資料〉ビーアドの歴史関連著作の販売部数/アメリカ史略年表
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■■ 小特集:ピエール・ブルデュー没10年 ■■
内側から、外側から、国家を考える
〔没後10周年シンポジウム「ブルデューとともに、国家を考える」報告〕 櫻本陽一
『ル・モンド』のブルデュー没後10年特集について 倉方健作
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□□ インタビュー □□
仏大統領選から考える「ユーロ危機」と「アラブの春」の行方 E・トッド
アメリカから訴える反核・平和 キャサリン・サリバン
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□□ 金時鐘さん、高見順賞受賞! □□
現実認識における革命 金時鐘
詩の贈与 鵜飼哲
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■ 「後藤新平の会」シンポジウム ■
東日本大震災と後藤新平
【問題提起】
青山やすし 「後藤新平に学ぶ六つのこと」
赤坂憲雄 「自治に根ざした復興と再生を」
北原糸子 「後藤新平の救援・救護との関わり」
陣内秀信 「後藤の震災復興事業に何を学ぶか」
増田寛也 「東北の自治の姿を打ち出す」
橋本五郎 「被災地で国会を開こう」
【討 論】
司会=橋本五郎
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■■ 書物の時空 ■■
●名著探訪
岡田英弘 「ヨハネの黙示録」
星 寛治 『詩集 冬の鹿』(眞壁仁著)
角山 榮 『長篠合戦の世界史』(J・パーカー著)
●書評
鈴木順子 「『アラン的表現』の先鋭化の試み 『絵本 アランの幸福論』(アラン著)」
桐原健真 「『開国物語』を解体する 『日本思想史新論』(中野剛志著)」
後田多敦 「海に人生を切り開いた人々の物語 『海の狩人 沖縄漁民』(加藤久子著)」
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□□ 新連載 □□
●〈短期集中連載〉放射能除染と地域再生 1
山田國廣 「地域循環型除染システムを構築する〔土を剥がない、高圧洗浄をしない〕」
●旧約期の明治――「日本の近代」の問い直しのために 序章
新保祐司 「明治初年的異形」
●井上ひさし、または吉里吉里国のゆくえ 序章
赤坂憲雄 「それは独立への手引き書だった」
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■■ 連載 ■■
●〈短期集中連載〉携帯電話基地局の電磁波汚染 2
古庄弘枝 「自宅のあるマンションの上に基地局ができた」
●詩獣たち 7
河津聖恵 「きれいなたましひの舟〔金子みすゞ〕」
●孤独――作家 林芙美子 6
尾形明子 「?燭はまだ燃えてゐる」
●天に在り――小説・横井小楠 10
小島英記 「未成の章」
●近代日本のアジア外交の軌跡 18
小倉和夫 「幣原協調外交の対中国政策〔漢口事件までの総括〕」
●伝承学素描 26
能澤壽彦 「三浦関造とその精神圏」
関連情報
GHQの占領下、戦後の日本社会の根本のシステムが作られていった。なかでも、もっとも重要なのは、「憲法」である。近代国家をめざしたわが日本国は、20余年の歳月をかけて「大日本帝国憲法」を作り上げた。ところが、現在の憲法は、敗戦一年足らずの間に、占領下の中でアメリカ憲法のような“追記”ではなく、全面改訂されたのである。わが国民の主権なき時代に支配者によって作られた。そこから「民主主義」が標榜され、「アメリカ化」の時代が始まっていた。
「『日本とは何か』を問うことは、『アメリカとは何か』を問うことである」
爾来、朝鮮戦争やベトナム戦争の特需、高度成長……と経済発展のスピードはめざましく、欧米の識者たちにも恐れられるような存在になった。1990年代に入るとバブルがはじけ、ただまっしぐらに“豊かさ”をめざして歩んできたわが日本に、雷が落ち冷水が浴びせかけられた。それから20年余。その間、何度もダッチロールを繰り返しながら今日の日本はある。
われわれは、先の命題を掲げて、「アメリカとは何か」をあらゆる角度から問うてみたいと思う。出発点となる本号では、20世紀アメリカを代表する歴史家チャールズ・A・ビーアドに焦点を当てる。処女作『合衆国憲法の経済的解釈』以来、常にアメリカという国家の根幹を見据えながら、妥協を許さぬ姿勢で、学者として執筆を続けたビーアドは、後藤新平や鶴見祐輔、松本重治らとの親交を通じて日本とも深い関わりがあることが知られている。重要な作品として『アメリカ共和国』『アメリカ合衆国史』があるが、遺作となったPresident Roosevelt andthe Coming of the War, 1941(1948年刊。邦訳『ルーズベルトの責任』)は、日米開戦におけるルーズベルトの責任を、公文書を駆使して冷静沈着かつ厳しい徹底追及で発売忽ちアメリカ国内で大変なセンセーションを捲き起こした。と同時に、大国アメリカが席巻する戦後世界を予見する作品でもあった。そうしたビーアドの幅広くかつ深い識見に学びつつ、現在の日本を、アメリカを、そして世界を問い直してみたいと思う。